コレラ対策、省庁争い…水道行政の移管が意味する「時代の終わり」
公衆衛生からインフラの維持へ――。半世紀以上にわたり、厚生労働省(旧厚生省)が所管していた水道行政が他省庁へ移管される。「近代以降、感染症対策として始まり、全国に普及した水道の一つの時代が終わった」。専門家はそう指摘する。発展の裏側には、省庁間の主導権争いもあった。水道週間(6月1~7日)にちなみ、その歴史や役割について改めて考えてみようと思う。
「この10年間で25万人の人々が犠牲になっているこの恐ろしい災難が、国全体の足枷(あしかせ)となり、あらゆる面で不利益を及ぼしたことは自明のことである」
細菌学者の北里柴三郎が、1887年にドイツ語で発表した論文「日本におけるコレラ」(訳・林志津江)の一節だ。コレラは、コレラ菌が引き起こす下痢と脱水症状によって死に至ることもある感染症。当時、日本だけでなく世界で猛威を振るっていた。
コレラ対策として注目されたのが、水道だった。そもそも、コレラはかつて、空気が悪いことで発症すると考えられていた。実は水が原因なんじゃないか。そう考えたのが、イギリスの医師ジョン・スノウだ。
1854年、ロンドンでコレ…
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- 【視点】
「いつでもどこでも安く供給――。こんな日本の水道事業が岐路に立っている」。このような1文で始まる記事を5年前に監修しました。少子化や老朽化で水道料金が値上がりし、維持できなくなる恐れがある。民営化できるようにして事業の効率化をはかるといった
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