アジア・太平洋地域を中心に国防、安全保障の担当閣僚らが参加する「シャングリラ・ダイアローグ(アジア安全保障会議)」(英国際戦略研究所主催、朝日新聞社など後援)が2日、シンガポールで開幕した。4日まで。2日夜の基調講演はオーストラリアのアルバニージー首相が務めた。3日には米国のオースティン国防長官、4日には中国の李尚福・国務委員兼国防相がそれぞれ講演する。
注目を集めていた米中国防相の公式な会談は開催されない公算が大きいが、米国防総省によると、2人は2日の基調講演の会場で会い、握手をして簡単に言葉を交わした。
シンガポール政府によると、会議には48の国や国際機関の大臣級の代表が参加する見通し。会場となるホテルには2日、米中両国の代表団のほか、東南アジア諸国や豪州、ニュージーランドなどの国防トップが続々と集まった。ロシアの侵攻を受けるウクライナのレズニコウ国防相も顔を見せた。
会期中には七つの全体会合と、六つの小会合がそれぞれ予定されている。各国の国防トップの講演のほか、この日にあったサイバー防衛をめぐる小会合には、国家安全保障局の岡野正敬次長が出席。サイバー攻撃は民間システムが狙われることも多いことにふれ、「官民が協力することが重要」などと語った。
また、アジア太平洋地域での各国の防衛装備をめぐる会合には自衛隊制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長が参加して「力による一方的な現状変更を許さないため、状況把握能力を高める必要がある」と語り、そのためには各国の連携が欠かせないなどと訴えた。
会議は、代表団どうしが対面での会合を効率的にこなす機会でもある。中国は2日朝からモンゴル、ニュージーランド、フィリピンなどとの個別会談を相次いで開催。米国もシンガポールや東南アジア諸国の代表などとの会談をこなした。
浜田靖一防衛相も現地入りし、3日に講演に臨むほか、各国との個別会談を重ねる予定だ。(シンガポール=栗林史子、下司佳代子)