植樹祭のダンス衣装デザインに赤い森 脳性まひの画家らが描く思い
岩手県陸前高田市で4日、第73回全国植樹祭の式典があり、メインアトラクションとして、盛岡市のダンス教室「リップスダンススクール」の子どもら約40人が、宮沢賢治の童話「虔十(けんじゅう)公園林」をダンスで表現した。
色使いが鮮やかな衣装は、障害がある人たちの作品を服やネクタイなどのデザインに生まれ変わらせる同市の会社「ヘラルボニー」がプロデュースした。
童話には、知的障害があったと思われる主人公の虔十が登場する。周囲からは理解されなかったが、木を植え、手入れし続けてできた杉林が、時代を超えて子どもたちの憩いの場になり、その後も残り続けた。人の価値と自然との共生がテーマになった物語だ。
陸前高田市の山あいに、虔十の杉林のように地域の人の憩いの場になっている場所がある。「田崎飛鳥絵画サロン」。ダンス衣装のデザインの一つになった作品「赤い森」を描いた画家、田崎飛鳥さん(41)のアトリエだ。全国各地から見学者が訪れている。
田崎さんは生まれつき脳性まひがある。言葉での会話は少ないが、自分の気持ちをアクリル絵の具に乗せ、何色も重ね合わせながら力強いタッチで筆を走らせる。「心で描くんです」。
東日本大震災以降、色使いが変わったという。津波で陸前高田市の自宅が流され、小さい頃から描いてきた200点以上の作品を失った。笑顔が消え、一度筆をおいたが、「自分の絵で人を楽しい気持ちにさせたい」と再び筆を執った。震災で亡くなった人々、生き物、自然を明るい色使いで描き続け、作品は大小合わせて約80点にのぼる。
自閉症やダウン症などの県内を拠点とする作家5人の6作品がダンスの衣装に起用されている。どの作品も異彩あふれる色合いで、見る人の目を強く引きつける。式典では、赤色が印象的な森や鮮やかな青色の点描画などで美しく彩られた布を、頭からすっぽりとかぶった子どもたちが、回り、走り、跳ね、震災からの復興、人の多様性、自然との共生。様々な思いを伝えようと、力強く踊っていた。(柴田悠貴)