河村市長、差別発言制止せず「申し訳ない」 名古屋城討論で市民発言
木造復元を目指す名古屋城天守のバリアフリー化をテーマにした名古屋市主催の市民討論会で、エレベーター(EV)設置を求めた身体障害がある男性に対して他の参加者から差別発言があったとして河村たかし市長は5日の定例会見で、差別発言を制止できなかった市の対応について謝罪した。
市民討論会は3日に名古屋市で開かれた。市側が住民基本台帳から無作為に選んだ18歳以上の参加希望者約40人が出席。河村市長も参加した。
市は「史実に忠実な復元」の方針を示す一方で、バリアフリー化については、天守の石垣部分から少なくとも1階までは車いすの人が利用できる小型の昇降機を設置するとしている。それより上層階の具体的な整備案は定まっていない。
討論会では、車いすの男性(70)が最上階まで車いすを運べるEVが設置されない場合に言及し、「障害者が排除されているとしか思えない」と市側に訴えた。
その直後、EV不要を訴える2人の男性が発言した。最初の男性は車いすの男性に対し、「河村市長が造りたいというのはエレベーターも電気もない時代に作ったものを再構築するって話なんですよ。その時になぜバリアフリーの話がでるのかなっていうのは荒唐無稽で。どこまでずうずうしいのかっていう話で。我慢せえよって話なんですよ。お前が我慢せえよ。エレベーターを付けるなら再構築する意味がない」などと話した。
次に発言した男性は身体障害がある人への差別表現を使った上で、「エレベーターは誰がメンテナンスするの。どの税金でメンテナンスするの。その税金はもったいないと思うけどね。毎月毎月メンテナンスしないといけない。本当の木造を造って」などと話した。
この2人の男性の発言の後には会場からは拍手も起きていた。市側の出席者は2人の発言を制止できなかった。
河村市長は定例会見の冒頭で、市民討論会で身体障害がある人への差別表現があったことを認め、「遠慮してくださいよと、とっさに言えるか分かりませんけど、すべきだった」などと制止できなかったことについて謝罪した。一方で、「我慢せい」などの発言については、制止するべきだったのかは「分からない」と判断を避けた。
会見に同席した市観光文化交流局の担当者は「我慢せい」との発言も含めて車いすの男性への発言について「不適切だった」とし、「差別的発言にあわれた方は大変心を痛めていると思いますので、おわびさせていただきます」などと話した。ユーチューブの市の公式チャンネルで配信していた市民討論会の動画は公開停止にしている。(寺沢知海)
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