現物の作品によるデザインの教科書――。東京・六本木の2121デザインサイトで開かれている「The Original」展は、そう形容したくなる充実ぶりだ。約150点で、プロダクト・デザインの神髄が味わえる。
大きなおわんのような座面が太い4本脚に支えられたカラフルな椅子、フェイ・トゥーグッドの「ローリーポーリー」(2018年)が、今展のメインビジュアルに選ばれている。
展覧会ディレクターを務めるデザインジャーナリストの土田貴宏さんによれば、トゥーグッドが出産する頃のデザインで、包み込むような姿になっている。
「オリジナル」には「原形」といった意味もあるが、この個性的というほかない椅子が示す通り、今回は、19世紀から2020年代までの「独創性」や「個性」を備えたデザインの名品を集めている。
企画を発案したのは、プロダクトデザイナーでデザインサイトのディレクターも務める深澤直人さんだ。開幕時の会見などの場で、「今の時代、何がオリジナルで何がコピーや模倣か、どうでもよくなっていて、パクりをパクりと思わない感情が世の中にある」と話し、「オリジナルが見えない時代」への危機意識を示した。そこから「デザインの神髄を見せることで、デザインを考えるきっかけになる展覧会」を考えたという。
展示の第1室は、テーブルやソファなどを組み合わせた室内のような見せ方で、日常の中でデザインを考える機会をつくる。
約100点が集まるメインの第2室は、おおむね時代順に進む。冒頭を飾るのは、ミヒャエル・トーネットの椅子「No.14」(1861年)だ。蒸気による曲木技術を使い近代化、大量生産が可能になった。モダンデザイン史上の名品だ。
この後、家具や照明器具から…
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