第1回ダッ、ダダダダ…魔物現る「あやしい曲」はあの夏の甲子園で生まれた

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河原田慎一
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 なにやら、あやしい。

 スペインの舞曲「ボレロ」や、テレビ時代劇「水戸黄門」のテーマ曲を思わせるリズムの繰り返し。

 ダッ、ダダダダッ、ダダダダッ、ダダダダダダダダダ……

 高校野球「甲子園」のアルプススタンドからこの音が聞こえてくれば、龍谷大平安(京都)のチャンス到来だ。

 スネアドラムと低音のリズムの上に、ミクソリディア旋法の勇壮なメロディーが乗っている。

 同時に、応援団の「来たな」という期待感と、なにやら不穏な空気が流れ始める。まるでスタンドから「魔物」が現れて、相手チームが守るグラウンドを覆い尽くすかのように。

 後に「あやしい曲」と呼ばれるようになった、この曲づくりに関わった吹奏楽部顧問の林晃さん(56)は、これで試合の流れが変わるのを何度も見てきた。

 今年の「春の甲子園」の2回戦、長崎日大との一戦でも、そうだった。

 2点を勝ち越された直後の七回裏、スネアドラムと重低音のリズムが鳴り響くなか、2死をとられてから5連打で逆転。

 「相手に威圧感を与える、がコンセプトの曲。野球部員も『流れてくるとやっぱり違う』と言ってくれる」

連載 アルプスの夏音

「夏の甲子園」に欠かせないアルプススタンドの音色。吹奏楽部員の思いは、「あの曲」にまつわる秘話は。「甲子園ブラスバンドフェスティバル」(6月11日)の出場校に聞きました。この記事中では、龍谷大平安の生徒が「あやしい曲」へのこだわりを語ってくれた音声「ポッドキャスト」も聞けます。

「あやしい曲」 リクエストはあの選手から

 林さんは、あやしい曲をはじめとしたオリジナル曲での応援を通じ、「龍谷大平安としてのプライドを表現したい」と考えている。

 オリジナル曲がまだなかった1990年代の中ごろ。「平安」はすでに夏の甲子園だけで出場20回以上の伝統校なのに、応援曲は「定番」ばかりだった。

 しかも当時男子校だった平安…

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