移住者カフェと地元がトラブル、告発マンガも拡散 土佐市長が陳謝
高知県土佐市の市立施設内にあるカフェの運営をめぐり、移住者であるカフェの運営者側と施設の指定管理者が対立し、トラブルがSNS上で拡散された影響で、市役所のほか、県内の他自治体や観光協会などにも苦情が殺到したとして、板原啓文市長は5日、市議会で「市の施設でこのような事態が発生したことは、市にも責任の一端がある」と陳謝した。今後、市と指定管理者、カフェ運営者の3者で協議する場を設けて解決を図っていくという。
この日開会した6月定例議会の冒頭で、板原市長は自らトラブルの経緯を説明した。
市によると対立が生じたのは、2016年に開業した市の観光交流施設(愛称・南風〈まぜ〉)。もともと、他地域の浸水対策のために土地を提供した「新居地区」の振興計画に位置づけられ、国の交付金を活用して市が3億円で建てた。市は条例を定め、地元のNPO法人を指定管理者にした。
開業と同時に、施設2階の喫茶スペースには、市の仲介で地域おこし協力隊員として東京から移住した40代男性がカフェを開設した。
その後、NPOとカフェ側が運営方法などで対立。昨年には退去通告をめぐるトラブルもあり、一連の経緯をカフェの女性店長が、今年から「理不尽だ」とツイッターで発信した。さらに5月10日、「高知の田舎に地域おこしに来てカフェを人気店にしたのに出ていけと言われた」とするマンガを投稿すると一気に拡散し、1億回以上も閲覧された。
市役所には「移住者をいじめるな」や「死ね」「殺すぞ」といった脅迫めいた電話が殺到。爆破予告も届き、小中学生が途中下校した。板原市長は5日の市議会で、「(殺すぞといった)脅迫行為や平穏な日常生活を脅かすような発信に強く憤りを抱いている」と述べた。
議会後に取材に応じた板原市長は、三者協議を呼びかけていると説明した上で、「カフェのSNS発信は、弱い立場から世間に訴えようとしたのだろう。気持ちは分かるので、訴訟にするのではなく、話し合いで解決を図りたい」と話した。(蜷川大介)