「九大生体解剖事件」の目撃者資料、活用希望かなわず 遺族に返却へ

貞松慎二郎
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 太平洋戦争末期、日本軍の捕虜になった米兵8人が福岡市の九州帝国大(現・九州大)で人体実験の末に殺害された「九大生体解剖事件」をめぐり、現場に居合わせた最後の目撃者が残した資料を遺族から預かっていた大分県宇佐市は5日、全資料を遺族に返却することを明らかにした。

 1945年5~6月、撃墜された米軍爆撃機B29の搭乗員8人が日本軍の命令で九州帝国大に運ばれた後、臓器摘出などの実験手術をされて全員死亡した。日本軍将校や同大教授ら30人が戦犯として起訴され、23人が有罪となった。

 資料を残したのは、2021年4月に95歳で亡くなった医師の東野(とうの)利夫さん。事件当時は医学生になったばかりだった。戦後、自身は訴追を免れたが、恩師の教授らが有罪判決を受けた。福岡市で産婦人科を開業しながら、真相究明のために関係者を訪ね歩き、著書を刊行した。東野さんの死後、遺族は資料の活用を希望していた。

 宇佐市には海軍航空隊の基地があったことから、市職員が1月20日に遺族から資料を借りて内容を精査したが、宇佐市関連のものはなかった。「一義的には当事者である九州大で収蔵すべきでは」として、九州大に打診する前に遺族の意向を確認したところ、断られたという。資料は6日、市職員が福岡市の遺族の元へ届ける。貞松慎二郎

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