ファン熱望の品切れ本、書泉が復活計画 書店員の目利きで魅力再発見

宮田裕介
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 関東近郊で書店を6店舗展開する書泉(東京都千代田区)は、品切れ・重版未定で入手が難しい本を「復活」させる取り組みを始めた。出版社などと協力し、来年3月ごろまでに10作品を出すことを目指すという。

 取り組みのきっかけは、今春、東京・神保町の「書泉グランデ」の書店員の働きかけで、長く品切れ状態だった「中世への旅 騎士と城」(白水社、1982年初版)が重版され、ヒットしたことだ。売れ残った本は、書店から出版社に返品できる委託販売が主流だが、在庫リスクを書店が負う「買い切り」を提案し、実現。この書店側の決断が反響を呼び、この本とシリーズの本計3冊で約2万冊が売れた。

 その事例を参考に、ファンが復活を熱望していたり、ネット販売などで法外な値段で取引されたりしている品切れ・重版未定の本について、出版社や著者と交渉し、適切な価格で読者に届けることを目指す。買い切りを想定しているという。

 読者には、校正刷りや発送の様子などをSNSで公開し、本が復活するまでの過程を楽しんでもらうことを考えているという。

 書泉の手林大輔社長は「各地で書店の閉店が相次ぎ、置かれている状況は厳しいと言われるが、書店員の目利きやお客さんとのコミュニケーションで、本の価値を再発見することはリアル書店の存在意義にもつながっていくはず。新しい書店のかたちに挑戦し続けたい」と話した。宮田裕介

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年6月10日14時20分 投稿
    【視点】

    大阪の中崎町に「葉ね文庫」という書店がある。句集や歌集、詩集を中心に扱う詩歌専門の書店だ。店内で交わされるコミュニケーションがまだその価値に気づかれていない句集や歌集、詩集の「発見」や、品切れ・重版未定で入手が難しい句集や歌集、詩集の「復活

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