老朽原発が稼働する町 国に避難道路求めるもめど立たず、識者も批判

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佐藤常敬
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 2011年の東京電力福島第一原発事故後、再稼働した国内の原発で唯一、40年の運転を超える関西電力美浜原発3号機。立地する福井県美浜町は、廃炉中を除く8基の原発が集中する県南部(嶺南地方)の6市町で唯一、南北へ通じる道路がない。町は事故時の避難道路として整備を求めているが、着工のめどは立っていない。こうした現状に識者からも批判が出ている。

 美浜3号機は2021年6月に再稼働した。関電は再稼働までに新規制基準に対応した安全対策とテロ対策施設「特定重大事故等対処施設」(特重)の設置に美浜、大飯、高浜の3原発に現時点で計約1兆1900億円を投じる見通しだ。美浜の安全対策と特重は約2600億円。

 一方、美浜町の戸嶋秀樹町長や町議会は、事故時の避難道路が不十分だとして、道路建設の必要性を国に要望し続けている。

事故時の避難は原発方向しかなく

 美浜原発は敦賀半島の西側に位置する。西海岸沿いを15キロあまり南下すると、役場などがある町の中心部にたどり着く。東西には国道や舞鶴若狭自動車道が通っているが、南北の道路は脆弱(ぜいじゃく)だ。

 町南部の新庄地区では、美浜で事故が起こり、住民が避難する場合、滋賀県側の南方向は林道があるものの、車が通れるレベルではなく、いったん北上するのが現実的だという。高木剛前区長(68)は「事故の原発に近づかないと避難ができない。住民が一番心配していることだ。原発と共生するなら住民の安全確保は大前提のはずだ」と話す。

 現在の林道での避難は本当に不可能なのか。実際に車で走ってみた。道幅4メートルほどでアスファルト舗装はされているが、倒木や落石が所々に転がっている。路肩にガードレールがないところもあり、そのまま崖に落ちてしまう場所もある。急峻(きゅうしゅん)な道が続き、これ以上進むと危険と判断し、途中で取材を断念した。

 町によると、そのまま進んでも県境にはゲートがあって閉まっており、一般車は通行できないという。しかも、滋賀県側は「モトクロスバイクが走るような道」(町の担当者)だといい、一般車が通るのはほぼ不可能だという。

 そのため、町は新庄地区から滋賀県高島市へ抜ける道路(6・3キロ)の新設を求めている。

記事後半では、避難道路の必要性について、2人の識者に聞きました。

 その建設費を町が試算したと…

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