「怪物」 映画評論家・北小路隆志 深く知るものが、反転
【評・映画】
一つの物語が3人の視点を介して変奏を重ねる。最初の物語は、一人息子を育てるシングルマザー(安藤サクラ)を中心とし、思春期と呼べる年齢に差しかかったからか、彼女の目に息子の言動が謎めいたものと映るようになる。突然、自分の髪の毛を切り始めたり、帰りが遅くなり探しまわると、遠く離れた場所で一人佇(たたず)んでいたり……。息子は担任教員の名前をあげ、彼に原因があると示唆するのだが……。
次に物語は、息子に名指しされた教師(永山瑛太)の視点で語り直されるが、それでパズルが埋まるわけではない。本作で提起されるのは不可解な謎そのものなのだ。母親は息子を深く愛し、彼のことを誰よりもよく知っている。だけど本当にそうなのか。むしろ、すべてを知っていると信じる馴染(なじ)みのある存在であるからこそ、彼が「怪物」に見えるのではないか……。
何かが僕らの足元で蠢(うご…
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