【そもそも解説】みんな違う遺伝情報 「ゲノム医療法」が必要な理由

有料記事

野口憲太
[PR]

 遺伝情報に基づいた医療の促進や、遺伝情報による差別が生じないようにすることを初めて定めた、「ゲノム医療法」が今国会で成立しました。そもそも「ゲノム」とは? なぜ差別が懸念されているのか。解説します。

ゲノムとは、DNAとは… 遺伝子調べるメリットは?

 Q ゲノムって何?

 A ある生物がもつ、すべての遺伝情報を「ゲノム」と呼ぶ。その生物の「設計図」だと考えるとわかりやすい。

 同じヒトの間でも、個人間でゲノム全体の0.1%に満たないごくわずかな違いがある。この差が、顔つきの違いや病気のなりやすさの違いなどの多様性を生んでいる。

 Q DNAも「設計図」と聞くけど、ゲノムとどう違うの?

 A DNA(デオキシリボ核酸)はゲノムを構成する物質のことだ。ゲノムを「設計図」とすると、DNAはその設計図を構成する「紙やインク」にあたると言える。

 DNAは、4種類の塩基という物質が連なった鎖のようなものが、2本ペアになった構造をしている。そのため、「塩基対」という単位でゲノムの情報量を表す。ヒトのゲノムは約30億塩基対の長さがある。

 Q じゃあ、遺伝子は?

 A DNAの遺伝情報(=塩基がどんな順番で並んでいるか)のうち、体のなかで何らかの機能をはたす部分のことを「遺伝子」と呼ぶ。

 たとえば、アルコールを分解する酵素をつくる遺伝子や、血糖値を下げるインスリンをつくる遺伝子など、ヒトには約2万の遺伝子があると推定されている。

 Q そんなにたくさんある遺伝子を調べるのは大変そうだね。

 A DNAの構造が明らかになったのは、70年前のことだ。

 1990年には、約30億塩基対あるヒトのゲノムをすべて読む国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」が始まり、2003年、解読完了が宣言された。

 その後も技術革新は進み、解読にかかるコストは下がった。米国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)によると、1人分のゲノム解読に、07年ごろまでは1千万ドル以上かかっていたが、19年ごろには約1千ドルまで下がった。解読にかかる時間も短くなっている。

 現在では、調べたいいくつかの遺伝子だけに注目して、どんな変異があるかを調べることもできる。

 Q 遺伝子を調べるとどんな良いことがあるの?

 A 大きく二つある。まず、病気の治療だ。病気に関連する遺伝子を調べ、どんな変異があるかに応じて、適した治療をする考え方を「ゲノム医療」と呼ぶ。

 がんに対する「がんゲノム医…

この記事は有料記事です。残り1223文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら