「相手がダムを破壊しようと」舌戦の末の決壊、水位異常訴えた住民も

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喜田尚 ニューヨーク=遠田寛生 ワシントン=高野遼
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 カホウカ・ダムをめぐっては昨年からロシアとウクライナの間で「舌戦」が続いてきた。

 ロシアは昨年2月にウクライナへの全面侵攻を始めた直後から、ヘルソン州のほぼ全域を占領。これに対し、ウクライナが「南部奪還作戦」を始めた7月ごろから、地元の親ロシア派幹部らは「ウクライナ軍がダムを破壊しようとしている」と主張し始めた。背景にはロシア軍にとってダムが、当時ドニプロ川の西岸にあった占領地への数少ない兵器、物資の補給路だったことがある。

 ウクライナが「ロシアがダムの爆破を計画している」と警告したのは昨年10月。ウクライナ軍がヘルソン州のロシア軍占領地に攻勢を強めていた時期だ。ゼレンスキー大統領は、ロシア軍がウクライナ軍の進軍を阻むためにダムに爆発物を仕掛けたと主張。ダムの爆破は「大量破壊兵器の使用」に等しいと訴えた。

 ウクライナ軍はその後、11月に州都ヘルソンを含むドニプロ川の西岸地域の奪還に成功。その直後には、衛星写真の分析で、ロシア軍が支配するダムの一部への「意図的な破壊」が報じられたこともある。

 ゼレンスキー氏は6日、「外部から砲撃で爆破することは物理的に不可能だ」とし、あらためてダムの決壊はロシアの攻撃によるものと断じた。

 カホウカ・ダムは侵攻開始直後からロシア軍の支配下に置かれ続け、管理の不透明さも指摘されている。

 ロイター通信など欧米メディアの報道によると、周辺住民らは今年5月から、ダムの貯水池の水位が急激に上昇したと訴えていた。一部で小規模な氾濫(はんらん)を起こし、過去に例を見ない水位に達していたという。

 決壊前の衛星画像では、水門…

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