ウソの上の人生 23歳で知った、親に隠されてきた精子提供の事実

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編集委員・大久保真紀
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 「親のウソの上で生きてきた自分の人生もウソのように感じた」

 都内に暮らす会社員の石塚幸子さん(44)は23歳の夏から人生が変わってしまったと語る。自分が父とは血がつながっておらず、第三者から精子提供を受ける非配偶者間人工授精(AID)で生まれた子どもだと知ったことがきっかけだった。

 「それまで自分が絶対だと信じてきたものが突然違うと言われてしまい、その価値観の上に成り立たせてきたものすべてが崩れてしまった。一体何が本当で何を信じていいのか、わからなくなった」

75年前から行われている非配偶者間人工授精(AID)。生まれた子どもは2万人超とも言われていますが、実名を明かして顔も出して発信しているのは、石塚幸子さんを含めて2人だけです。医療技術による妊娠、出産の後も、子どもたちの人生は続いていきます。石塚さんの声に耳を傾けます。

 会社員だった父は、石塚さんが小学生のころからあまり外出せず、よく転んでいた。高校生になってから父が患う病が筋ジストロフィーであることを知った。「男の子にしか遺伝しない」と言われていた。ぼんやりと自分が将来、男の子を産むと遺伝するのだろうか、などと考えていた。

 大学院1年のとき、父の病気を理解しようと考え、診断書を見せてもらった。そこにあった病名は「筋強直性ジストロフィー」だった。

 調べてみると、男女に関係なく2分の1の確率で遺伝する病気であることがわかった。自分も発病するのではないかと、怖くなった。

 そんな悩みを周囲に話したところ、母の耳に入ったようだった。

「だれの精子かはわからない」 涙がとめどなく

 2002年8月8日。風呂から上がると、「大事な話がある」と母に声を掛けられた。

 客間で母から告げられた。

 「父とは血がつながっていな…

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