公取委から突然の電話 「海猿」作者がインボイス制度に今思うこと

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前田健汰 中野浩至
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 10月から始まる消費税インボイス制度をめぐり、「海猿」や「ブラックジャックによろしく」などで知られる漫画家の佐藤秀峰さんが代表を務める「佐藤漫画製作所」(東京都武蔵野市)が、公正取引委員会から「注意」を受けた。

 「うかつだった」――。何が問題視されたのか、複雑な胸中も合わせ、佐藤さんが取材に明かした。

「優越的地位の乱用」?

 「インボイスのことで取引先から問い合わせがあったので、お話をうかがいたい」

 4月16日。佐藤漫画製作所に公取委の担当者から電話があった。不在だった佐藤さんが翌日に折り返すと、担当者から取引先に対する「優越的地位の乱用」の可能性がある、と告げられた。

 悪いことをしている認識はまったくなく、「なぜ」という思いだった。

 佐藤漫画製作所は、漫画家と電子書籍配信業者との取り次ぎを行っている。漫画家から作品を受け取り、それを業者に卸す。作品が売れたら、業者の手数料を差し引いた分からロイヤルティー(権利使用料)として8割を漫画家に渡し、残り2割を同社が受け取るというのが基本的な流れだ。

 とかく作品を買いたたかれやすい漫画家に有利な環境をつくろう、と10年以上前に始めた事業。「8割」は業界最高水準だという。

 しかし問題となったのは、このロイヤルティーに含まれる消費税の取り扱いだった。

 インボイス制度をめぐっては、税務上だけでなく、独占禁止法についても留意しなければならない点があります。何がポイントになったのか、佐藤秀峰さんへの取材をもとにたどります。

 制度が始まると税控除を受け…

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    市田隆
    (朝日新聞記者=調査報道、経済犯罪)
    2023年6月9日14時35分 投稿
    【視点】

     消費税のインボイス制度をめぐっては、公正取引委員会が5月、発注事業者が取引先に対して消費税分を差し引いた価格で納めるよう求めた事例が、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)につながるおそれがあるとして約10社を注意した、との報道があった。  

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