NPO法人「アニマルライツセンター」代表理事・岡田千尋さん
千葉県北部、田畑に囲まれたのどかな一画に立つ自宅を訪ねると、7羽の鶏がにぎやかに出迎えてくれた。「捨て鶏」だった雄1羽をのぞいて皆、ほとんど身動きができない狭さの「バタリーケージ」に詰め込まれ、卵を産ませ続けられていた鶏たち。食肉処理される直前に保護された。「来た当初はみんな、ぼろぼろだった」という。
例えば最初に保護した雌の「リリ」。全身の毛が抜け、尻尾は骨がむき出し。ケージで体がこすれ、あちこちすり切れていた。「やって来て2カ月で健康を取り戻し、フサフサに。採卵鶏の生活がいかに過酷かわかります」
NPO法人「アニマルライツセンター(ARC)」の代表になって20年。「畜産動物はペットなどと比べても飼育数が最も多く、動物のなかで最もひどい扱いを受けている」と話す。そんな畜産動物たちのアニマルウェルフェア(動物福祉)を向上させようと、この分野の活動をリードしてきた。
海外の法制度を調べあげ、日本の飼育実態を追及し、インターネット上などで公開する。消費者を啓発し、署名を集め、その数を背景に、卵や食肉を扱う食品メーカーや小売りチェーン、ホテル、飲食店などと交渉する。
鶏の「ケージ飼育」と豚の「妊娠ストール」廃止をめざす
めざしてきたのは主に二つ。一つは、採卵鶏のケージ飼育からの解放。もう一つは、母豚を種付け前後から出産まで114日程度、自分の体と同じくらいのスペースで飼育する施設「妊娠ストール」の廃止。「EUを中心として世界的に、ケージフリーやストール廃止の動きが加速している。でも日本では、当たり前のこととして行われている」と指摘する。
子どもの頃から動物の苦しみ…
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- 【視点】
土曜別刷り「be」のフロントランナーで、NPO法人アニマルライツセンター(ARC)代表理事の岡田千尋さんを取材しました。最初に会ったのは2012年の動物愛護法改正に向けた議論が行われていた頃だったと思うので、もう10年以上前です。当時、日本
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