サザエさんのオリジナル漫画をもとに、掲載当時の世相を振り返る朝日新聞土曜版beの連載「サザエさんをさがして」。今回は1950年2月掲載の漫画を題材に、「東京の牛」について掘り下げました。東京の街中で、なぜ牛が電信柱につながれているのか。調べてみると、昭和20、30年代ごろまでの東京の意外な姿が浮かび上がってきました。
牛がモグモグと反芻(はんすう)する様子を見て連想したのだろう。ワカメがサザエにガムを買ってほしいとねだっている。サザエは困り顔だが、それはいいとして、問題は牛の存在だ。街中の電信柱につながれている。
漫画は1950(昭和25)年2月のもの。昭和20年代の「サザエさん」には、ヒモでつながれるなどした牛が、まま描かれている。戦後の東京の街中には、身近に牛がいたのだろうか?
明治時代、東京は「酪農王国」だった
まず「東京都統計書」にあたってみた。確かに、東京にはけっこう牛がいた。区部だけでその数、1548頭(50年2月1日現在)。内訳は牛乳生産のための乳用牛が769頭、農耕で使ったり食肉用だったりする役(えき)肉用牛が779頭だった。磯野家が居を構えていたとされる世田谷区にはそのうち計196頭がいて、区部では足立、板橋についで3番目に多かった。これだけ牛がいたのなら、一家が目にしていた可能性は高い。
そもそもなぜ東京の街中に多…
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