ルッキズムの縛りから我々は解放されるのか 姫野カオルコさん短編集

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田中ゑれ奈
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 容姿の多様性の尊重が叫ばれる昨今。しかし、それはどこか偽りを抱えた「罪滅ぼし」ではないのか――。姫野カオルコさんの連作短編集「悪口と幸せ」(光文社)は、ルッキズムに真っ向から切り込んだ。

 昭和、平成、令和と三つの時代にわたって複数の家族が登場する4編は緩やかにつながり、網の目のような人間関係が浮かび上がる。その中で、容姿にまつわる不安がそれぞれの時代の価値観に乗せて描かれる。

 1999年刊行の長編「整形美女」では、美容整形をモチーフに美醜という概念そのものを問い直した。だが、当時は「男に見向きもされなかった女性が整形で美人になって復讐(ふくしゅう)する話」を期待され、書きたいことが十分に伝わっていないという思いが残ったという。ルッキズムを疑う感覚が世間である程度定着した今、「ようやく書きやすくなった。今なら私の言い方でわかってもらえるんじゃないか」。

 今作では、体のとある部分に関するよくある「悪口」が鍵となる。昭和生まれの大女優はSNSでその言葉を投げかけられることを強く恐れ、21世紀生まれの人気モデルは実際にそう揶揄(やゆ)される。

 その悪口が何かは「読んでの…

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