「ネイチャーポジティブ」前面に、脱炭素など連携も 環境白書
政府は9日、2023年版の「環境・循環型社会・生物多様性白書」(環境白書)を閣議決定した。生物多様性の損失を止めるだけでなく、回復に転じさせる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」という言葉を使った項目を初めて設け、前面に出した。森林保全が温暖化対策につながるなど、他分野との連携も強調した。
今年3月に閣議決定した「生物多様性国家戦略」でもネイチャーポジティブをキーワードにしている。ネイチャーポジティブの事例としては、千葉県の印旛沼で、水田などを保全することで、自然が回復し、水害や水質悪化のリスクという社会課題まで解決につなげようとしている取り組みがあるという。担当者は「自然保護といった規制という印象ではなく、前向きな言葉として大事にしていきたい」と話す。
この分野では、昨年12月に採択された国際目標「昆明―モントリオール目標」に含まれる、30年までに陸海の30%以上を保全するという「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」の達成などを掲げる。
ほかに白書では、「脱炭素」として、温室効果ガス排出の2013年度比46%削減に向け、進んだ取り組みを支援する「脱炭素先行地域」を少なくとも100カ所選定するとした。「資源循環」としてリサイクルなどのビジネスの市場規模80兆円以上を目指し、プラスチックの資源回収量を倍増させることなども盛り込まれた。
西村明宏環境相は9日の閣議後会見で白書について「三つの分野を、それぞれ個々に取り組みを進めるだけでは危機的な状況を回避できず、一緒に実現を目指す行動が必要」だと話した。(市野塊)
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