世界の先住民族は今も闘っている アイヌと各国の先住民族が話しあう
世界各地の先住民族が「先住権」を勝ち取った苦難の歴史や今後の課題について、北海道のアイヌ民族と五つの国・地域の七つの先住民族が話しあうシンポジウムが開かれた。先住権が法的に認められていない日本で、アイヌ民族が先住権の一つである自由な漁業権を取り戻すにはどうすればよいか――。
太平洋に突き出した襟裳岬の東側に位置する北海道浦幌町で5月26~28日に開かれたシンポジウム「先住権としての川でサケを獲(と)る権利」。主催したのは浦幌町のアイヌ民族でつくる「ラポロアイヌネイション」だ。
ラポロアイヌネイションは2020年8月、地元の川でサケを捕獲するのは先住民族アイヌの権利だとして、国と北海道に対し、道知事の許可なしに経済活動としてのサケ漁をする権利を認めるよう求める訴訟を札幌地裁に起こした。
訴状によると、原告らの先祖は江戸時代に浦幌十勝川周辺で暮らし、明治初頭に国がサケ漁を禁じるまで交易品としてサケの刺し網漁をしていた。禁漁に合法的な根拠はなく、同川河口部から4キロの範囲で刺し網漁をする権利があると主張している。道内の河川では現在、アイヌ民族の文化的伝承・保存目的に限り、知事の許可を受ければサケ漁が認められている。
「国と北海道はアイヌの先住権を存在しないと言っている。世界の先住民族から、先進的な先住権の行使を学びたい」
シンポ冒頭、原告代表の差間正樹さん(72)が強い口調であいさつした。
「元々あった集団の権利」
先住権は、日本も賛成して2007年に採択された「先住民族の権利に関する国連宣言」で、先住民族の「固有の権利」と定義され、先住民族は伝統的に使用する土地や資源に対する権利を持つと定められている。これらは所有、使用、開発、管理する権利とされる。また、国は先住民族の先住権を法的に認め、保護する義務があるとする。
カナダ・ハイダのラス・ジョーンズさんは「先住権は新たにつくられるのではない。元々あった先住権を政府が認めるかどうかだ」と強調した。
各先住民族の報告を通じて明確になったのは、集団的権利としての先住権を、いかに政府に認めさせるかという課題だ。
日本では19年にアイヌ施策…