鑑定医「詐病の可能性高い」 弁護側は心身耗弱主張 神戸・高2刺殺

黒田早織 杉山あかり
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 神戸市北区で2010年10月、高校2年の堤将太さん(当時16)を殺害したとして、殺人罪に問われた男(30)の裁判員裁判の第3回公判が9日、神戸地裁であった。被告の精神鑑定をした医師が出廷し、「被告に精神障害はなかった」と指摘した。

 医師は昨年10月~今年1月、豊岡拘置支所などで計11回、各2時間程度被告と面接。被告の両親らとも面接し、152ページ、約20万字の文書にまとめた。

 被告は医師との面接の際、(統合失調症の特徴である)「幻聴や妄想があった」と主張。だが鑑定の結果、それらは容姿や失恋など、誰でも持ちうる劣等感に由来するもので「病的な特徴がない」と認定した。

 統合失調症に特徴的な「会話が成立しない」などの思考障害が一切ないことや、事件後、治療を受けずに改善したことから、「被告の説明は統合失調症の症状とは矛盾がある」と指摘した。

 被告は当時、精神障害はなく健常だったとし、虚言や誇張で精神障害を偽った「(病気と見せかける)詐病」である可能性が非常に高い、などと結論づけた。

 詐病が疑われる根拠の一つは、幻聴や妄想を自ら進んで言うことだという。また医師は、逮捕直後の被告が妄想や幻聴について供述していない点にも着目。「『あとで思い出した』と語り始める」などを含め、詐病を見極める基準10項目のうち8項目が被告にあてはまった、とした。

 弁護人は「統合失調症以外の精神疾患の可能性はないのか」と質問。医師は具体的な疾患の名称や特徴を挙げながら、いずれも被告には該当しない、と説明した。

 7日の初公判で弁護側は「被告は普通の精神状態ではなかった」として心神耗弱を主張。事件当日、堤さんを見たときに「しばいたろか、という(幻聴の)声が聞こえた」とし、刑事責任能力を争う姿勢を示している。

 被告は初公判の罪状認否で「同年代の男性を複数回刺したのは事実です。殺すつもりはありませんでした」などと述べ、殺意を否定した。(黒田早織、杉山あかり)

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