「リトル・マーメイド」 映画評論家・森直人 分断を克服する勇敢さ
【評・映画】
海の王女アリエルを演じる主演のハリー・ベイリーが素晴らしい。トリトン王の七つの海の娘の中で最も若く、既成の掟(おきて)に抗(あらが)ってまで自由意志を貫こうとする人魚。勇敢なアリエルは、人間の王子エリックの心を瞬く間に虜(とりこ)にするように、一度聴いたら忘れられない歌声の持ち主だ。R&B系のポップシンガーとして知られるベイリーの圧巻の歌唱は、その特権に相応(ふさわ)しいと納得させるもの。ベイリーにしかない個性と能力で、彼女自身が小さな頃から憧れていたというアリエルに新たな生命を吹き込む。
ディズニーアニメの中でも人気の高い1989年の同名映画の実写リメイク。それをブロードウェー出身で、「シカゴ」や「NINE」などミュージカル映画の名手として定評のあるロブ・マーシャル監督が手掛けた。原作はアンデルセンの「人魚姫」だが、内容はシェークスピアの「ロミオとジュリエット」にも近く、先行世代の争いが築いてしまった世界の分断を、若い世代が乗り越えようとする物語である。
陸と海を隔てる種族の対立と…
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