愛知で始まる「ラーケーション」に歓迎と懸念 名古屋市は導入見送り
児童生徒が保護者との校外学習を目的に自由に休む日を選択できる「ラーケーション」が愛知県内の公立学校で9月から順次始まる。保護者の休暇に合わせることで働き方改革にもつなげるねらいだ。一方、家庭によって制度の利用に格差が生じることを懸念する声もある。
ラーケーションは、「ラーニング(学習)」と「バケーション(休暇)」を合わせた造語。県が主導し、県内53市町村の公立小中高校と特別支援学校で導入される。9月から順次、県立の高校と特別支援学校、19市町の小中学校でモデル事業が始まる。
ラーケーションの日は1年に最大3日まで。まとめて、または分散して取得できる。原則、保護者が1週間前までに学校に計画を提出。欠席とはせず、「出席停止・忌引など」と同じ扱いになる。受けられなかった授業は家庭での自習で補うとしている。
「自営業で土日は休めない。3日フルで使いたい」。中学1年生の子をもつ知多市の40代女性は歓迎する。これまでも子どもを休ませて旅行に行くことがあったといい、「ラーケーションで何か変わるわけではないけど、3日連続で取得して、日帰りでは厳しい北陸に子どもと行きたい」と話した。
総務省の社会生活基本調査によると、有業者の約2人に1人が土曜日に、約3人に1人が日曜日に働いている。
県内では、トヨタ自動車関連の企業など製造業に従事する人が就業者の4分の1と多い。祝日に工場を稼働させ、その分の休みをお盆や年末年始などにまとめて取得する「トヨタカレンダー」が浸透しているという。大村秀章知事は会見で、「企業からは強い要望があり、経済団体、産業界から相当なご支援の声をいただいている」と述べた。
一方、教育現場などからは、制度が新たな格差や教員の負担につながりかねないと疑問視する声もある。
県内の自治体で唯一ラーケーションの導入を見送った名古屋市の坪田知広教育長は「休みが取れる家庭と取れない家庭のコントラストが生まれ、公平性を欠く。いじめなどにつながる可能性もある」と話す。
制度では、休んだ分の学習を自習で補うとなっている。これについては「『公欠だから学校でフォローすべきだ』と当然なる。教員不足の教育現場ではフォローしきれない」と話す。(三宅梨紗子)
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教育格差に関する著書がある龍谷大学社会学部の松岡亮二准教授の話 修学旅行などは、どんな家庭の子どもでも文化的な経験を得る機会になるが、ラーケーションは社会的経済的に恵まれていて、旅行や自然体験に熱心な家庭の背中を押すことになる。授業を休んだ分は家庭の自習で補うという点も、自己責任を前提としている。休暇の取得については、まず企業が有給休暇を取得しやすくする環境整備を優先すべきではないか。
- 【視点】
ラーケーション、興味深い動きだなと思って見ています。個人的には学校の役割や影響力が大きくなりすぎていると思うので、これで休みやすくなる家庭が出るなら「いいな」と感じます。一方で、別にもっと年間3日と言わずもっと休んでもいいと思いますし、そう
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