なぜ短い日本の夏休み 休めないのは「恥」のバカンス大国との違いは
あっという間に終わってしまう日本の夏休み。「日本でも、長期休暇をとってバカンスに行けたらいいのになあ」と考えたことがある方も多いのでは。そもそも、長期休暇を取りやすいのはどこの国で、なぜ日本では取りにくいのでしょうか。労働法に詳しい九州大学の野田進名誉教授に聞きました。
――長期休暇を取りやすい国と言えばどこでしょうか。
まずは「バカンス大国」とも言われるフランスです。前提として、休暇とバカンスは違うものだと考える必要があります。休暇、いわゆる年次有給休暇(年休、有休)は、1年ごとに得られる、仕事をしなくても給料がもらえる休みです。一方、バカンスの定義は、フランスでは「自宅外に継続して4泊以上宿泊する旅行に出ること」です。仕事や研修、病気治療が目的の場合は除きます。
定められた年次有給休暇の日数に対し、実際に休んだ「取得率」がよく話題になります。日本は50%程度で世界的に低いと言われています。しかしフランスでは取得率という考えがそもそもありません。有休は取るのがあたりまえで、取得率は100%だからです。
過去1年間にバカンスに出かけた人の割合を「バカンス出発率」といいますが、フランスでは50~60%ほどです。日本では統計がありませんが、一般的に、4泊以上の旅行に出ることは、そうそうないのではないでしょうか。
――フランスでは多くの人が長期休暇を取っても、仕事や経済への影響はないのでしょうか。
事前に休暇の計画を立てることで、仕事の調整が可能になります。会社によっては年明けぐらいから夏休みの計画を提出させるところもあります。労働組合や使用者はそれをもとに、社員が休暇をとっても欠員がでないよう人員配置をします。また上層部になればなるほど、休暇を取ります。休暇が多く取れるというのは名誉であり、自慢できることなのです。「忙しくて休めません」というのはむしろ恥ずかしい発言です。
確かに7月、8月は経済的に落ち込みはしますが、それはもう織り込み済みの社会になっています。
ナチスの影響も?
――フランスで長期休暇をとってバカンスに出かけるようになったきっかけは、何だったのでしょう。
やはり、1936年に通称「…
- 【視点】
働き続けることがスタンダードな日本では、長期休みに罪悪感を覚えたり、不安を感じたりする人が多いのではないでしょうか。私自身もまさにそうです。 その根底には、勤勉が良しとされ、休むことは怠けることでダメなことである、という子供の頃からチクチク
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