夜の歴史博物館がお化け屋敷に 心理学科の大学生が恐怖演出 広島

西本秀
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 真夏の夜に真っ暗にした博物館を「お化け屋敷」に見立て、市民に来場してもらう恒例のイベントが、広島県福山市で今年も開かれている。お化けに扮して、おどろおどろしさを演出するのは、地元の大学で犯罪心理学を研究する学生たちだ。

 ガシャン!

 暗闇のなかに突然、何かを床にたたきつけるような甲高い音が響いた。

 取材に訪れた記者もドキッとする。続いて、思わぬ方向から白装束のお化けの腕が伸びてきた。思わず、「オオッ」と声が出た。

 会場は、中世の集落遺跡「草戸千軒町遺跡」を紹介する県立歴史博物館(ふくやま草戸千軒ミュージアム、福山市西町)。館内に当時の町並みを実物大で再現した展示スペースがある。来場者は懐中電灯の明かりを頼りに、木造の小屋や市場、井戸などが並ぶ路地を通り抜ける趣向だ。

 今月5日からの開催を前に、7月末のリハーサルを取材した。種明かしになるため詳細は書けないものの、試験的に招待された小学生の男の子は、学生が扮した最初のお化けが登場したところで、「もう引き返したい」と一緒に来た祖母にしがみついていた。

 来場者を怖がらせる仕掛けは、福山大学人間文化学部心理学科の学生たちが教員と考えた。

 大杉朱美准教授(犯罪心理学)によると、①暗くて見通しが悪い、②一本道などで逃げることができない、③悪いうわさがある、といった環境に人は不安や恐怖を抱きやすい。こうした心の働きを利用してルートを設定したという。同学科は例年、大学祭でお化け屋敷を運営しており、そのノウハウも活用した。

 同博物館でのお化け屋敷イベントは今夏で3年目となる。発案した石橋健太郎学芸課長が以前、三次市にある県立歴史民俗資料館(みよし風土記の丘ミュージアム)で勤務していたとき、地元の「もののけ」伝承をヒントにお化け屋敷を企画し、福山大学に協力を仰いだ。そのときは1回限りだったが、その後、福山の博物館に転勤となり、恒例企画となった。

 お化け屋敷は毎週土曜の夜、26日まで開かれているが、安全確保のため事前の応募・抽選制になっており、すでに埋まっている。

 石橋課長は「中世の町では夜がどんな様子だったのか、当時の暮らしを実体験できる企画。来年も開催したいので、楽しみに待ってほしい」と話す。西本秀

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