「映画監督か育児か」 選択迫られた私、8年ぶりの新作に込めた願い

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細見卓司
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 米国やイタリアなど世界の映画界で活躍する女性監督や俳優が集結し、女性が主人公の七つの短編物語で構成した映画「私たちの声」が公開中だ。日本からは「きみはいい子」以来8年ぶりの監督作となる呉美保(おみぽ)監督(46)と俳優の杏さん(37)が参加した。なぜ、呉監督が新作を撮るのに8年もかかったのか。短編のストーリーそのものとも地続きのその理由は、映画界の現状を浮き彫りにする。

 2014年の「そこのみにて光輝く」が国内外で高い評価を受けた呉監督がメガホンをとったのは短編「私の一週間」。シングルマザーのユキ(杏さん)は2人の子どもを育てるために休みなく働く毎日。早朝に目覚め、朝食を作り、洗濯、掃除。小学校と保育園へそれぞれ子どもを送り届け、仕事へ。夕方に子どもたちを迎えに行った後は、習い事へ連れて行く。夕食を作り、子どもたちを寝かせつけると、日が変わった頃に眠りにつく。映画はセリフに頼らず、せわしない日常のカットを細かく積み重ねる。

 呉監督自身、8歳と3歳の2人の子を持つ母親だ。自身が普段こなしていることをベースに周囲にインタビューしたり、杏さんとも話し合ったりして日常を描いた。

 「夫がいて、妻が家事育児にワンオペになる状況を描くのは暗に男性を責めるだけになると思いました。ただ、現実は女性がまだまだ家事も育児も担っている。タスクとして実際どういうことをこなしているのか、何が大変なのかを映像で見せたかった」と振り返る。

「それでは映画は無理だよ」

 呉監督の8年のブランクは…

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