セクハラ・パワハラ議員名を公表します 議会が自ら条例を作った事情
「子どもは産まないのか」と女性に聞いたり、漢字変換のちょっとしたミスに激怒したり――。一般企業が撲滅に取り組むハラスメントがいまだに横行している場所がある。
その一つが地方議会だ。自治体職員が議員からハラスメントを受けたとする事案が全国で相次ぎ、条例をもうける事態にまでなっている。ハラスメントが生まれやすい構造と、その対応策として条例が求められる事情を取材した。
職員は「しもべ」
「議員の中には職員を『しもべ』のように下に見る人もいる。職員たちは議案を通してもらいたいから、黙って耐え、何も言わない」
こう打ち明けたのは、今年6月にハラスメント防止条例を施行した千葉県柏市の職員だ。
別の女性職員は顔を合わせた議員から「交際相手はいるのか」「子どもは産まないのか」と声をかけられたという。別の職員は「一部の市議は、漢字の変換ミスにも激怒する。若い職員は耐えられないだろうからと市幹部が出向く」と漏らす。
同じ千葉県では刑事事件になった例もある、長生村では6月、議長(当時)が公用車を運転中の女性職員の腕にけがをさせたとして略式命令を受けた。議会から「セクハラ・パワハラを確認した」などとして3度の辞職勧告を受け、議員を辞職した。
柏市議会では今春、そんな実態を明らかにしようと職員にアンケートを実施した。全職員約2800人のうち157人が「ハラスメントを受けたことがある」、316人が「見たことがある」と回答した。
内容別(複数回答)にみると、最多は「ささいなミスを大声で叱責(しっせき)、必要以上に長時間の叱責、意に沿わない対応に恫喝(どうかつ)」のパワハラが169人。次いで「彼氏や彼女がいるのかと聞かれる、早く結婚しろと言われて苦痛を感じる」のセクハラが154人だった。
こうした現状を受け、市議会は6月にハラスメント防止条例を可決し、即日施行した。条例にはハラスメントした議員名を公表するだけでなく、ハラスメントを見聞きした議員も本人に指摘したり、議長に報告したりする義務をもうけた。
円谷憲人議長は「市役所は市民へ行政サービスを提供する場所。条例はハラスメントによる職員の生産性を下げないための条例で、被害者を守る人権条例でもある」と力を込める。
賛成した内田博紀市議は「自らの政策を実現しようと、職員に厳しい口調の議員もいた。議員と職員は互いに勉強して緊張感を持って政策論争する関係。職員とは政策論争に徹してハラスメントを防ぎ、有権者の思いを伝えることで、政策への反映とチェック機能を果たすべきだ」と話す。
要望を実現したい議員、議案を通したい職員
なぜ、条例まで定めるのか。
議員によるハラスメントの背景とは。また全国で防止条例を制定している自治体はどれくらいあるのでしょうか?取材で聴きました。
地方議会に詳しい明治大学公…
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- 【視点】
ハラスメントを可視化することは、地方政治のより健全な環境をつくるために1つ有効な対応策ではあるのでしょう。ただ、条例制定などの取り組みだけでなく、地方議員の政治活動や働き方そのもの、また、そこにおける行政職員の関与のあり方を省みる必要がある
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