調査報告書の書き換え、損保ジャパンの出向者関与 BMの部長指示で
中古車販売大手ビッグモーター(BM)による保険金の不正請求問題で、損害保険ジャパンからの出向者が、BMによる調査報告書の書き換えに関与させられていたことが、関係者への取材でわかった。組織的な不正ではなかったことにしようというBM幹部の指示に従い、内部告発者に書き換え後の報告書に署名させていた。金融庁の調査では、出向者がBMで果たした役割も焦点になる。
損保ジャパンは昨年7月、書き換えの事実を知りながら、BMとの取引を再開した。その判断の責任を問われ、白川儀一(ぎいち)社長(53)は辞任を表明した。
白川氏は今月8日の会見で取引再開について「不正の指示はなかったとされた書類に通報者の署名がされていたことをもって判断した」などと説明した。一方、「現在、調査委員会で調査しており、控えたい」として、詳しい経緯の説明は避けていた。
しかし、関係者への取材によると、告発者に署名させたのは損保ジャパンからの出向者だった。
BMは昨年6月、損保ジャパンを含む大手損保3社に、不正請求の調査報告書を出した。原案には「上司による不正の指示があった」という記述があったが、報告書では「不正の指示はなく、連携ミスや作業者の技術不足などの過失によるもの」と変わっていた。
関係者への取材によると、内容を書き換えたのはBMの担当部門の部長だった。部長の指示を受け、損保ジャパンの出向者は、書き換え後の報告書について、不正を告発したBM従業員から署名を取った。出向者に署名を取らせることで報告書の信用度を高めようとした可能性がある。
損保ジャパンの調べに出向者は、署名を取る際「工場長から不正指示があったことは部長に伝えた」と告げ、告発者は「それならばいい」と署名したと説明した。出向者はBM社内が「部長に逆らえる雰囲気ではなかった」とも話した。
もっとも、朝日新聞の取材に告発者は「証言を修正したことは一度もない」と主張。署名も「中身を確認する機会はなく、『対象となった車を調査したかを確認するため』と説明された」とし、損保ジャパン側の認識とは食い違う。
BMの部長から調査結果の書き換え自体を指示された別の出向者もいたという。その出向者は損保ジャパンの調査に「部長の暴言を受忍している会社だった。あえて波風を立てなくてもいいと思った」などと答えた。
損保ジャパンの担当部署は、報告書の書き換えが「一線を越えている」として調査を続ける方針だった。しかし、経営陣が出席した会議で白川氏は、書き換えの事実を知りながら、告発者の署名などを根拠に取引の早期再開を提案した。(柴田秀並、久保田侑暉)
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