今も続く中古車の放射線検査 沖縄の業者、震災以降3億円負担

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 沖縄県内の中古車業界で東日本大震災による原発事故の影響が続いている。全国の港から積み込まれる中古車は放射線検査が実施されていて、検査費用は運送費に上乗せされる。県内で取引されている中古車の8~9割は本土から船で運搬。検査費用は県内の中古車業者が負担していて、その額は2011年から現在まで約50万台分で3億円余り。JU沖縄(県中古自動車販売協会)は検査制度の見直しを求めるが、検査を要望している港湾の労組側は「従業員の命を守るため」として検査の必要性を強調する。

 東日本大震災後、港湾から輸送される中古車から高い放射線量が確認されたことを受け、全国の港では港湾関係の労働組合でつくる全国港湾労働組合連合会の求めに応じて全量検査が行われている。

 連合会を構成する労組の一つ、全日本港湾労働組合(全港湾)の鈴木誠一委員長は「車を船に積む際に従業員はワイヤで固定する作業をするため、検査が必要」と説明する。

 福島第1原発の事故を受け、福島県では12年が経過しても放射線量が高い帰還困難区域が残る。区域の近くには道路があり、そこを走った車が中古車として取引される可能性もある。

 「実際、原発事故後に車の線量を検査するとアラームが鳴ったこともある」と話し、全量検査の継続に理解を求めた。

 JU沖縄によると、県内に中古車を輸送する際は検査料として船賃に1台当たり700円が上乗せされる。

 JU沖縄の仲田裕治会長は「検査を始めて1~2年は検査に数件引っかかった例があった。ただ、10年以上が経過した今でも検査が必要なのか」と話す。検査が始まった当初は理解を示していた協会会員からも疑問の声が上がっているという。

 県内の中古車業者が経済的な負担に疑問を示す背景には近年のエネルギー価格の高騰もある。沖縄では車体だけでなく部品を県外から仕入れる際も船で輸送するが、その費用は燃料代の高騰を受け値上がりしている。

 仲田会長は組織としてこれまで取り組めなかった労組側との直接交渉も考えている。同時に「ただ、話し合った結果それでも検査が必要となれば、行政や事故を起こした責任がある東京電力への働きかけも必要となる」と打開策を模索している。(沖縄タイムス)

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