税金の無駄遣いだけでは済まされない 霞が関と永田町の働き方改革を

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 内閣人事局が8月、国会会期中の官僚の働き方の実態調査を公表しました。国会答弁を作り終える時間は改善したものの、官僚が深夜まで残業を強いられる状況は変わりません。働き方改革のコンサルを手がけるワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さんは記事へのコメントプラスで「このニュースの異常さを世界にぜひ広めてほしい」と書きました。今回の調査結果のポイントはどこにあるのか。小室さんの寄稿です。

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ギリギリまで決まらない委員会日程

 官僚の残業が深夜3時までだったのが深夜1時半過ぎまでになったそうだ。内閣人事局が公表した実態調査によると、今年の通常国会で、委員会での国会議員からの質問への答弁を作り終えた時刻の平均は、委員会当日の午前1時42分。昨年の臨時国会の調査では午前2時56分で、74分早まったという。

 こんな異常な働き方の原因となっているのが、国会における、議員の質問通告の遅さ。さらにその原因になっているのが、国会の日程が一年を通じて、ギリギリまでいつ開かれるかが決まらない仕組みだ。

 こんな国は先進国に日本しかない。例えばイギリス議会の下院では、1人の議員が大臣に出来る質問数は1日2問まで。委員会開催日も、曜日で固定されて決まっており、質問の事前提出は、開催日の3日前の午後0時半まで(金・土・日曜日を除く)となっている。

 今回、内閣人事局による調査結果の真のポイントは、これらの仕組みにある。今回の調査では、初めて国会の開催日時がいつ決まったのか、それによって質問通告が何時にされたのかという関係がセットで公になった。

 質問通告が委員会開催日の前々日までに行われたのが712件(58%)。前日午後6時までに通告されたのが476件(38・8%)あり、前日午後6時以降に通告されたケースが39件(3・2%)となっている。また、委員会そのものが「開催日の前日にセット」されたケースが77件あった。

 委員会の開催そのものが前日まで決まらなければ、質問をする議員側や議員秘書にも大きな負担だ。これを通称「日程闘争」といい、与野党の駆け引きで国会日程がギリギリまで決まらないことを言う。

 与党から審議に関する情報が十分に出されていないので、国会を開くことに合意しない野党。ギリギリまで開催するしないを闘争し、やっと日程が決まった時にはもう国会前日なので、それから各党の議員が質問通告を出し、官僚が深夜まで大臣答弁を作る。

 こんな「闘争」があることで、国会対応業務で発生する官僚の残業代は、タクシー代を含まずとも100億円を超えるという試算もあった。国民が負担している税金の無駄遣いをしてよいわけがない。

 それだけでなく、国家を担う人材の流出・質の低下、行政ミス・パワハラ・不祥事の温床につながることが懸念される。

 また、民間企業の残業の原因になっていることも指摘したい。

 民間企業になぜ関係するのか…

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