認知症の蛭子能収さんが個展 漫画と異なるタッチ、変わらぬ斬新さ

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森本美紀
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 「これ、オレが描いたんですか。すごい絵ですね。ちょっと驚いています」

 描き下ろした新作の絵画19点を展示する個展「最後の展覧会」展の会場で、漫画家でタレントの蛭子能収(よしかず)さん(75)は、こう言ってはにかんだ。

 蛭子さんが認知症であることを2020年7月に公表してから、3年余りがすぎた。

 「漫画家、そして芸術家としての蛭子さんに戻ってほしい。笑顔でい続けてほしいという思いがありました」

 今回の展覧会を企画したうちの一人、光文社の「女性自身」副編集長、吉田健一さん(49)はそう話す。

 同誌で今年5月まで約9年間続いた人気連載「蛭子能収のゆるゆる人生相談」、蛭子さんの著書「認知症になった蛭子さん」(2021年)の編集などに携わってきた。

 レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の合併症だと3年前に公表して以降、症状が進み、仕事が減っていく蛭子さんの姿にもどかしさを感じ、展覧会を企画できないかと考えたという。

 そこで、昨秋、蛭子さんと約40年のつきあいがある「特殊漫画家」の根本敬さん(65)に相談した。根本さんにとって蛭子さんは「偉大な先輩」。個展をともに開いたこともある。

 「蛭子さんをフェイドアウトさせてはいけない」。そんな思いが一致し、根本さんが展覧会を監修することになった。

     ◇

 制作は昨秋から始まった。

 蛭子さんの状態に合わせ、体調が良い今年7~8月、集中的に取り組んだという。

 現場は、蛭子さんの漫画の編集に携わってきた出版社「青林工藝(こうげい)舎」(東京都新宿区)にある畳敷きの一室。かつて、蛭子さんがよく訪れた場所だ。

 週2回、1回4時間ほど、蛭子さんはキャンバスに向かい、アクリル絵の具を使い、絵筆を手に描いた。

 蛭子さんは、数時間前の記憶…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年9月19日13時6分 投稿
    【視点】

    「オレは(死ぬまで)なんとなく楽しく生きればいいと思っています。たぶん、これからもそうだと思います。とにかく死ぬのだけは嫌だし、生きていればなんとかなる。」 連載「蛭子能収のゆるゆる人生相談」の最終回の蛭子さんの言葉だ。

    …続きを読む
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    大村美香
    (朝日新聞記者=食と農)
    2023年9月18日17時32分 投稿
    【視点】

    久しぶりに蛭子さんの姿を見て、記事を読み、嬉しくなりました。蛭子さんのままで書き続けて欲しいという周囲の人たちの思いが集まって、実現した展覧会。「最後の」と言わず、ぜひ次回も、と願っています。

    …続きを読む
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