「鏡に映らない」ファッションの価値 まひ患者と開発のカバンに装備

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江戸川夏樹
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 鏡に映るものだけを究める。

 服やカバンを買う人をいかに美しく、素敵に、かっこよく、エレガントに見せられるか。

 それがファッションだと思っていた。

 デザイナーの伊藤卓哉さんは言う。「ボタンをつければ、デザイン性が高まり、もっと売れるかもしれない。服をよりよくするための付加価値として、必要なのはモノ。それが長年の考えでした」

 価値観が変わったのは9年前だ。

 「鏡に映るものだけが本当に求められているのだろうか? ボタンだけが価値なのだろうか」

 世界的なファッションデザイナーの故三宅一生さんの元で働いた後に独立。レザーバッグのブランドを立ち上げ、軌道に乗っていた頃のことだ。

 新しい素材を求めて、不要エアバッグの再生を紹介する講演会に参加した。

 自動車メーカー「ホンダ」の社員が熱く語っていた。

 「エアバッグは事故の時に使うものだから、安全のためには『使われない』のが理想。でも、命を守るために丈夫な素材で作られている。車とともに、スクラップされるのはもったいなくて」

 琴線に触れた。「一人でも救おうと長年研究した結果、捨てられるものを作る。この人たち、カッコイイな。ファッションに生かしたい」

 とはいえ、自動車解体工場に行ってみて、自信を失いかけた。

しみついた火薬の汚れ 「採算とれる?」

 エアバッグを取り出すには…

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