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佐賀空港へのオスプレイ配備計画では、空港は約70機を擁する国内最大級の陸上自衛隊のヘリ拠点になる。防衛省は空港西側の土地に設ける新駐屯地の面積を環境影響評価(環境アセスメント)対象外の約30ヘクタールとしており、もし認可されれば、その後に規模が拡張されてもアセスは行われないという。面積にとらわれずアセスが必要だと指摘する専門家もいる。

 大規模開発では着工前に環境アセスメントをする必要がある。県環境影響評価条例では、駐屯地の建設は「宅地その他の用地の造成事業」にあたり、面積35ヘクタール未満はアセスの対象にならない。

 県環境課の担当者によると、当初の最終構想が35ヘクタール未満なら、計画の認可後に「拡張が必要になった」と規模を拡大しても、アセス対象にはならないという。また、アセスの対象になっても、駐屯地外で行われるオスプレイの飛行行為や騒音問題は対象外という。

 アセスは項目が大気や土壌の汚染、騒音、生態系、景観への影響など多岐にわたる。着工前に自治体や住民に計画や調査の内容を示し、意見を聴く必要がある。

 2006年に分譲が開始された鳥栖市の流通業務団地グリーン・ロジスティクス・パーク鳥栖(約70ヘクタール)の造成事業では、調査方法の決定から着工まで約5年かかったという。

 現在は事前の手続きがさらに増えている。アセス対象になれば、防衛省が目指す2019年の駐屯地開設に間に合わなくなる恐れがある。今年2月に来県した左藤章防衛副大臣(当時)は記者会見で、将来的にアセスにかかる可能性を問われると「ない。35ヘクタール以内」と明言しつつ、「オーバーするなら県との相談になる」と含みも持たせた。

 防衛省は陸上自衛隊が導入するオスプレイ17機と、陸自目達原駐屯地(吉野ケ里町)のヘリ約50機の計約70機を新駐屯地に配備する計画だ。防衛省によると、ヘリ約70機を置く国内最大の陸自ヘリ拠点である木更津駐屯地と同規模になる。

 木更津駐屯地の面積は約210ヘクタール。佐賀空港の滑走路やエプロンなどの面積は約110ヘクタール。防衛省が新たに30ヘクタールを取得しても、面積的には木更津より手狭だ。

 防衛省が10日に公開したイメージ図では、空港西側の区画の一部が赤線で囲まれていた。駐機場や格納庫を整備するため買収を図る約30ヘクタールの土地という。

 図ではこの土地以外の漁師ら所有の土地も灰色に塗りつぶされていた。「70機分の駐機場や格納庫、誘導路などのすべてを30ヘクタールに収めることはできない。徐々に拡張していくつもりではないか」と話す関係者もいる。防衛省は朝日新聞の取材に、「今のところ約30ヘクタールで足りると考えている。実際は現地調査しなければ分からないが、35ヘクタール以上に拡張するという固まった予定はない」と答えている。

佐賀空港を巡る防衛省の計画とアセスについて、千葉商科大教授で、東京工業大名誉教授の原科幸彦氏(環境計画・政策)は「よくある『アセス逃れ』のようだ。アセスは住民が意見を述べるのに一番良い仕組み。アセスが行われないと、事前に情報を得て声を上げる機会も失うことになる」と危惧する。

 面積による線引きについては、「規模だけにとらわれる日本の制度がナンセンス。米国のアセスは人々が懸念する事項に答えるという理念で、開発の規模に関わらず、人為的行為なら対象。オスプレイの飛行訓練も対象になり、市民の反対で挫折したこともある」と指摘する。

 原科氏は、「アセスは人々の声に耳を傾けること。県の環境アセスなら、県知事と議会が対象にするよう条例を変えることもできる」と話している。

 一方、30ヘクタールという面積では、土地買収自体も困難を伴いそうだ。

 空港西側の土地約90ヘクタールは地元の漁協4支所で分けて所有している。地権者は地元4支所の計約550人におよび、土地の分け方も複雑だ。

 防衛省が買うのがそのうち約30ヘクタールだけとなれば、場所によって買収対象となる地権者とそうでない地権者が出る。漁協幹部は「買うなら全部を対象にしないと、地権者や支所同士であらぬ対立を生み、交渉自体がはねつけられるかもしれない」と指摘している。

(松川希実)