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東日本大震災で大きく沈降した後、隆起に転じた東北地方沿岸の地殻変動が、7年を過ぎても止まる兆しがない。研究者は今後数十年は隆起が続き、震災前の高さを超えてしまう場所もあると予測する。復興事業では、地盤隆起に伴う設計変更で施工ミスも発覚。隆起が続けば、さらに影響が広がる可能性もある。

 国土地理院が3月、震災から7年間の地殻変動の観測結果をまとめた。

 マグニチュード(M)9の巨大地震直後、石巻市寄磯浜で107センチ、女川町女川浜で89センチなど、牡鹿半島沖の震源に近いところほど地盤が沈降した。その後隆起に転じ、震災翌日から今年2月までの累積は寄磯浜で54センチ、女川浜で51センチと、沈んだ量の半分ほど戻した。東松島市矢本では50センチ沈降した後に44センチ戻すなど、変動が小さかった場所は元の高さに近づいた。速度は少しずつ遅くなっているが、1年数センチのペースが続く。

 東北大の日野亮太教授のグループは、地殻変動のモデルをもとにシミュレーションを実施。例えば女川は、2028年ごろに震災前の高さを超える、とはじきだした。日野教授は「30~40年間は隆起が続くだろう」とみる。

 地中でいったい何が起きているのか。

 震災前、海側プレートの沈み込みに陸側プレートが引きずられてたまった「ひずみ」が、境界面が滑ったことで陸側がバネのように跳ね上がり、巨大地震が起きた。地盤の形が大きく変わり、沿岸部では沈降となった。一方、地殻より深くにあるマントルは水あめのようにゆっくり流動する性質(粘弾性)を持つ。巨大地震でこの流動が生じ、遅れてじわじわ地盤を押し上げる「粘弾性緩和」が起きているという。

 日野教授は「従来の地震学が予測したM9クラスの地震後の変動と、かなり異なる。数百年規模のサイクルでの地殻変動が起きている可能性もあり、隆起がいつどこで止まるか、予測は難しい」と話す。

漁港岸壁の復旧に影響も

 地盤隆起の影響を最も受けるのは、漁港の岸壁だ。地震時に沈んだ分をかさ上げして復旧工事を施しているが、その後隆起した分だけ岸壁は高くなり、漁船の荷揚げや乗り降りに支障を来すようになった。

 石巻市鮎川港では、隆起分を取り除く「かさ下げ」工事が続く。国は、岸壁が30センチ以上隆起すれば「地盤隆起災害」として災害復旧を認めており、今後隆起が続けば、同様の工事箇所が増える可能性がある。

 防潮堤も設計変更を余儀なくされた。国土地理院が17年2月に水準点を改定したことを受け、県は工事が終わっていない計89カ所について、当初計画より十数センチ~30センチ引き下げた。

 ただ防潮堤は漁港と違って、直接の支障はさほどない。昨年の見直し時点からさらに変動したとしても、「その時点での正値に基づき設計しており、高さは適正というしかない」(県河川課)という。

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 国土地理院は大地震後の地殻変動が続いていることを踏まえ、地点ごとに標高を決める方法を転換する。従来は、2地点に標尺を立て高さの差を測る「水準測量」で全国の水準点の標高を出してきたが、時間もお金もかかっていた。人工衛星やGPSを使う測量に切り替え、災害後の復旧・復興に必要な標高を、迅速に提供するという。

 今年度予算に1億6千万円を計上。GPS精度を上げるため、まず航空重力測量により全国の重力データを整備する。衛星測量に全面移行するのは6年後で、東北の復興事業には間に合いそうもない。

(編集委員・石橋英昭)