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 相撲ファンには年に1度、夏場所前だけの楽しみがある。横綱審議委員会の「稽古総見」が無料で一般公開されるのだ。今年は約5千人の熱心なファンが詰めかけた。

 横審委員が一堂に会し、場所に向けた横綱の仕上がり具合を確認する現在の形の稽古総見は、42年前の夏場所から始まった。

 1950年に誕生した横審は76年夏場所まで、横綱のいる部屋を各委員が巡って仕上がりを確認していた。74年に就任した春日野理事長(元横綱栃錦)は横綱を自らの部屋に呼び、横審委員とともに調整ぶりを確かめるようになった。

 北の湖親方(元横綱)が生前、「激しい稽古だったよ。顔や体をぬぐったタオルに血が染みているんだから」と語ったことがある。78年12月29日付の朝日新聞朝刊は、「北の湖が鼻血を出し、若乃花が引っかきキズで胸元を血でにじませるなど」と報じている。

 春日野理事長からバトンを引き継いだ二子山理事長(元初代横綱若乃花)は部屋が杉並区にあり、交通の便などの理由から相撲教習所で稽古総見が行われるようになった。国技館アリーナでの無料公開は2000年夏場所前に始まり、いまに続いている。

 今場所前の稽古総見では、力士会長の鶴竜が「朝早くから来ていただき、ありがとうございます」とあいさつした。大相撲への信頼回復への思いも込め、協会側と話し合って決めたという。

 理事長として「土俵の充実」を掲げた春日野理事長が、横綱たちを手元で観察したいと企図した横審稽古総見。その後、関取衆全体の調整を見つめる場となり、いま、ファンサービスとしての役割も果たしつつある。

 (抜井規泰)