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 表からそば打ちの部屋が見える。一歩店に入ると、落ち着いた空間が広がる。築50年ほどの店舗兼住宅を全面的に改築し、テーブルや柱、板敷きには古材をあしらった。

 

 「ゆっくりくつろいでもらえるお店にしたくて」と店主の日下(くさか)直哉さん(43)。小さい子も歓迎とあって、昼は子連れの女性たちでにぎわう。

 

 人気の「獲(と)れたて海鮮丼とそばのセット」を頂いた。海鮮丼は3種の魚の刺し身とシラス、卵黄が入り、ボリュームたっぷり。石臼で粉をひき、その日出す分だけ打つというそばは細めで香り高い。

 

 「胸のすくようなさわやかなそばを打ちたい」と日下さん。連日朝早くからそば打ちの部屋にこもっている。

 

     *

 堺市出身。子どもの頃から料理人にあこがれた。大学卒業後、調理師学校を経て、地魚料理で有名な和歌山の人気店「銀平(ぎんぺい)」に入った。

 

 2年後、そばを中心にした系列店への異動を志願した。学生時代にそば店でアルバイトをした経験があり、そばを打ってみたいと思った。

 

 粉をひく。水を入れ、練って伸ばして切る。そば打ちの工程は単純だ。だが壁に突き当たった。自分では同じようにやったつもりでも、日によって同じ味が出せない。

 

 悩んでいた時、店の関係者が大阪市大正区にあったそば店「凡愚(ぼんぐ)」(現在は和歌山県)を紹介してくれた。味わって衝撃を受けた。かつてないさわやかさがあった。

 

 店主の真野龍彦さんは開けっぴろげに何もかも教えてくれた。技術以上に学んだのが「心構え」だった。いいそばの実の入手先探し、保管法、ひき方……。どこをとっても、真野さんは実に一つひとつ丁寧に取り組んでいた。

 

 「自分もぶれないことだ」。そう心に刻み、2007年12月に「草香(くさか)」を開いた。「銀平」での経験を生かし、海鮮や豚肉、鶏肉のメニューも豊富にそろえたが、軸はあくまでそばだ。

 

 試練もあった。4年前は厨房(ちゅうぼう)から出火し、一時休業を余儀なくされた。昨年7月には脳梗塞(こうそく)で突然倒れた。「もうだめかも」。そんな弱気は周りの人たちが吹き飛ばしてくれた。「待ってるよ」と声をかけてくれた常連客たち。スタッフも誰一人欠けず、営業再開の日を待ってくれた。

 

 「こんな僕のために、本当にありがたい」と日下さん。周囲の期待にこたえるために、今日も店に立ち続ける。

 ◆人気メニューベスト3

(1)獲れたて海鮮丼とそばのセット 1800円=写真

(2)炭焼きコース 3800円

(3)揚げたて天麩羅(てんぷら)とそばのセット 1500円

 (いずれも税別)

 <そば草香>泉大津市東豊中町2の2の14。JR阪和線和泉府中駅西口から徒歩10分。営業時間は11時半~15時(ラストオーダー14時半、禁煙)、18~22時半(同21時半、一部喫煙可)。24席。昼夜ともできる限り予約を。月曜の夜と火曜は休み。電話0725・24・8576。