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 部活動やクラブチームで野球をする子が、東京都内でも減っている。原因は? 野球好きを増やす手立ては? 都高校野球連盟の武井克時・専務理事(69)、練馬区軟式少年野球連盟の安部隆行・副理事長(62)、都中学校体育連盟の北野一也・野球部副部長(60)の3人と、中学シニアチーム選手の母(47)が語り合った。

 ◆テレビない、広場ない、親の負担大 重なる原因 どう打開

 ――日本中学校体育連盟によると、野球(軟式)をやる都内の中学生は、2001年度に約2万1千人だったのが、今年度は約1万1千人と半減しました。同じ期間で微減だったサッカーとは状況がだいぶ違います。現場でどう感じていますか。

 安部 私のチームはかろうじて消滅や他チームとの合併といった危機はないですが、それでも30代の息子が入った頃より人数は半分ぐらい。同学年で1チームが作れる年は、まれです。

 北野 今年度までの5年間に、都内では中学の野球チームが約100減り、約510になりました。私は石川県出身ですが、東京には(学校外の)野球チームがあり、驚きました。私の少年時代は中学で部活をやり、高校で初めて硬球を握るのが一般的でしたから。

 ――高校をみると、野球も微減のようです。

 武井 それでも学校同士の連合チームはあり、最多は5校で組みました。毎年、新入生が入ってくるよう努力をお願いしていますが、なかなかできないのが現状です。

 ――なぜ、子どもが野球から離れるのでしょう。

 北野 昔はプロ野球を地上波テレビで見られました。子供の頃は原っぱやグラウンドが近くにあり、遊びが野球でした。今は、バットを振るのも、ボール投げも公園では危険ということで、やる場所がありません。

 保護者 指導者の確保が難しいと感じます。地域の野球チームでは、保護者がコーチを務める場合が少なくないですが、自分の子供が学校を卒業すると、保護者も一緒にチームを離れるケースが多いようです。

 武井 野球離れが進んだ中学校は、やはり指導者が少ないようです。東京の高校では、ここ20年ほどで指導者が増えました。将来の指導者を育てようと、困っている高校同士で練習試合をすることからやり始めました。やがて母校でコーチをして監督を目指したり、他校に赴任したりする若い指導者が出てきました。

 ――指導者育成は大事な対策ですね。保護者の立場では、野球離れをどう感じていますか。

 保護者 野球はサッカーより練習時間が長いようです。道具が多く、それを自家用車で運んであげるなど保護者の負担が小さくありません。

 ――保護者の負担は、そんなに必要ですか?

 安部 少年野球は指導者の多くがボランティアなので、保護者がお茶を持ってきて渡すようになってしまっています。私のチームでは、お湯入りポットやスポーツドリンクを机に置き、コーチに「勝手に飲んで下さい」と簡素化しました。

 保護者 「お茶くみなどの『当番』は敷居が高い。だから、月謝を払うことでその代わりにできるなら、子供に野球をさせてもいい」という声を多くの母親から聞いたことがあります。

 北野 中学では、普段の練習で保護者が動くことは、まずありません。

 武井 「そういう作業をしないで」と、父母会を作らない高校もあります。

 ――東京は中学受験が盛ん。野球より受験勉強を優先させる子も多い?

 保護者 受験をする子が多い地域は強豪チームに入らないそうです。両立は本当に大変でした。土日は塾でテストや授業があり、野球もやる。自宅でバットの素振りや勉強の時間を計ったりしながら、両立に取り組みました。

 安部 指導者としては両立させてほしい。勉強の合間を縫って練習に来る子を「よく来たね」と受け入れる子もいました。ただ、「君は練習が少ない。他の子に申し訳ないから(試合に)出さないよ」という指導者もいました。

 武井 受験戦争の中で、スポーツには情操教育の大切さがあると思います。

 ――子供の選択肢の幅が広くなっています。

 北野 野球を見たり、遊んだりする機会が減りました。体育の授業でキックベースをやりますが、ルールを知らない子が多い。「他の競技より野球はルールが難しい」という声も、よく聞きます。

 安部 サッカーは幼稚園のころからチームを作り、触れ合うことが多いようです。そこで、(野球を簡単にした)ティーボールを小さな子の間で広めて、もっと底辺を育てようという動きが盛んになっています。

 ――ティーボールは、投手の投げる球ではなくティーに置いた球を打つので、野球より簡単。軟らかい球を使ったり、少人数でもできたりします。

 武井 都高野連としても、東京で率先してやろうとしています。未就学児から小学校低学年まで「親と一緒に遊びましょう」というところから。幼稚園を訪ねて用具を提供したり、やり方を教えたり。打つ、投げる、捕るという楽しさの体験から始めないと野球には入ってきません。

 北野 中学校でもティーボールをやっています。バットで打つ楽しさを子供たちに味わってもらおうと。

 ――ほかに野球好きを増やす工夫はありますか。

 安部 3年ほど前から、少年野球のスタッフがユニホームを着て、小学校の土曜授業でキャッチボールやバットの振り方を教えています。

 北野 中学でも部員の少ない学校同士の合同チームは以前からOKでしたが、市や区を越えて認めるなどルールを緩めています。

 武井 グラウンドの狭い都心の学校は、校舎の屋上からボールを投げて外野フライを捕る練習にしたり、屋上にネットを張り巡らせて打撃練習をしたりして工夫もしています。野球が好まれてきたのは、「ルールを守る」「あいさつをする」などのしつけができたから。控え選手も「縁の下の力持ち」を担っている、そういう気持ちも育みます。楽しく野球を遊んでもらいたい、というのが私たちの願いです。

(岡雄一郎)