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 世の中に実在しない本のことを、みなが読んだふりをして語り合う「架空読書会」が、各地で広がっているという。仙台で開かれたその不思議な集まりを、のぞいてみた。

 誰がどこで始めたのかはよくわからない。ネットではおととしごろから話題になっているようだ。

 ルールは簡単。誰かが思いついたタイトルを言うなどして、話し始める。参加者はその本を読んできたことにして、思い思いに感想を語る。ただし、先に他の人が話した内容について、否定や反論はしないこと。著者や装丁に話題を広げたっていい。

「主役ムロツヨシ」

 仙台市市民活動サポートセンター(青葉区)の行事の一環で開かれた架空読書会には、SNSやチラシで知った十数人が参加。三つに分かれたうちの一つの輪では――。

 「リンゴが印象的でしたねえ」と、Aさんが口火を切る。

 B「北国の大自然の中でね」

 A「最初はリンゴが味方かと思いました」

 C「だまされちゃいましたね」

 D「赤リンゴだとばかり思ってたら、青リンゴ」

 A「タイトルなんでしたっけ。そして何とかが消えた、とか。長くて覚えきれなくて……」

 B「岩陰に何とか」

 A「『そしてリンゴと私が岩陰に消えた』だ。主人公が青リンゴに追い詰められ、消えちゃうんです」

 C「まさかそんな恐ろしいリンゴとはね」

 A「今度映画化されるって。福田雄一監督、主役ムロツヨシで」

 B「主題歌は椎名林檎!」(一同笑い)

ツッコミどう返す

 初対面の4人が20分ほど熱く語って、1ラウンドは終わった。「どこに転がってゆくかわからないコミュニケーションが楽しい。また参加したい」と会社員の女性(39)。利府町から参加した櫛田洋一さん(32)は、「相手がどうツッコミを返すか考えながら、キラーパスを出す。人となりも何となくわかってきます」と話した。

 仙台での架空読書会を主宰するTea(ティー)さんは22歳の社会人1年目の男性。大阪でのイベントをツイッターで知ったのがきっかけで、昨年夏からこの日まで4回、会を開いてきた。

 Teaさんは架空読書会を通じて「ゆるい『つながり』の場をつくりたい」と考える。深くつきあう仲間とも、SNSだけの友達とも異なる関係。そのためのコミュニケーションのツールともいえる。

 東京の書店が開いたり、普通の読書会を開いていた人が試してみたりと、静かなブームの架空読書会。Teaさんが主宰する会の案内は、アカウント名「本楽カフェ」のツイッターで。(石橋英昭)