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 刀剣や艦船など、擬人化が花盛りの昨今。今度は家紋かと思い、軽い気持ちでページをめくると驚いた。うんちくやデータが半端な量ではない。

 「内容が濃すぎるとよく言われます」

 著者の家紋研究家、森本勇矢さん(41)=京都市上京区=は笑う。

 例えば、「桐紋(きりもん)」。豊臣秀吉や円山応挙らが使っていたことでも知られ、現在は日本政府の紋章にも「五七桐(ごしちぎり)」が用いられている。普及率と名高さから「十大紋」と呼ばれる家紋の一つだ。「桐は瑞鳥(ずいちょう)である鳳凰(ほうおう)が止まるとされる樹木であり、天子・天皇家の象徴」などの説明とともに、紋をイメージした和装の女性が描かれている。派生した家紋の数は約145種、使用ランキングは6位だという。

 「そもそも家紋の発祥は京都と言えるんです」と森本さん。平安時代、内裏は公家が乗る牛車で混雑し、どの車が誰のものか分からなくなった。そこで自分のものを見分けるために独自の文様を車体に施したのが家紋の始まりとされている。内裏とは天皇が住む御殿のこと。つまり平安京があった京都で生まれた文化、というわけだ。

 森本さんは父で染色補正師の景一さん(69)が家紋を研究していた影響で、自らも調べるようになった。

 本格化したきっかけは2011年の東日本大震災で、墓石にも大きな被害が出たと知った時だ。13年には地元の京都でも桂川が氾濫(はんらん)し、川沿いにあった墓地が水浸しになった。「墓石には家紋が刻まれていることが多い。そこにしかないものもある。家紋を保全しなければと、いてもたってもいられなくなった」。京都家紋研究会を立ち上げ、京都の墓を調べて回るようになった。

 そんな中、奈良県橿原市の出版会社「知楽社(ちがくしゃ)」から「家紋無双」の企画を打診された。最初は想像もしていなかった擬人化という手法に困惑した。だが、知楽社が20~30代の男女100人に実施したアンケートで「自分の家紋を知っているか」との問いに8割近くが「わからない」と答えた結果なども知らされ、「家紋の認知度を高めたい」という思いが一致していると引き受けた。

 擬人化は単に「萌(も)えキャラ」にするのではなく、家紋の意味や意義を採り入れた造形に。「家紋の探し方」というコーナーも設け、若い人にも関心を持ってもらえるよう心がけた。

 家紋は家を表す象徴であり、子孫繁栄など祖先の思いが込められている。「家紋を知ることで家族や家に思いを巡らせることができる。家紋がなければ新しく作ることもできる。まずは興味を持ってもらいたい」(向井大輔)

 もりもと・ゆうや 1977年、京都市上京区生まれ。着物の染色補正などを手がける父・景一さんの会社のホームページ作成などを手伝いながら、家紋を研究。講演会も多数開催している。京都家紋協会代表。日本家紋研究会副会長。著書に「日本の家紋大事典」(日本実業出版社)。

家紋無双 5万を超えるという家紋の中から、よく使われている82種の家紋を「植物紋」「動物紋」「器材紋・建造紋」などのモチーフごとに6章に分けて紹介。代表的な家紋や派生して生まれた家紋のほか、由来や歴史、分布図、使用ランキングなどがびっしりと書き込まれている。擬人化したキャラクターは10人の絵師(イラストレーター)が手がけた。昨年7月出版。

知楽社・税込み1404円