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 真っ白な建物のショーウィンドーに、単色のポップな陶器が並んでいる。店は「トキノハ」。山科区の清水焼団地にある京焼・清水焼の工房兼直売店だ。伝統工芸品を扱う店や工房が並ぶこの地域では珍しく、客は20~40代がほとんどを占める。

 一帯は1962年、市が支援して工業団地として整備された。現在、50を超える京焼・清水焼の窯元や問屋が集まっている。

 トキノハは2011年9月に開店。店主の清水(きよみず)大介さん(38)が焼く器は、細かい柄の描き込みが特徴の伝統的な京焼・清水焼とは印象が異なる。

 父親が陶芸家だった清水さん。東山区の府立陶工高等技術専門校で学び、南丹市の陶芸家のもとで3年間の修業を積んだ。07年、左京区の実家の一角に工房をつくって独立した。

 間もなく、自身初の個展を清水焼団地のギャラリーで開いた。そこでギャラリーを営む男性から「団地に空き物件があるけれど、どう?」と勧められた。府中小企業団体中央会によると、12年の京焼・清水焼の出荷額は、94年時と比べて26%減。変化を求め、若い陶芸家と若い客を呼び込もうとしての打診だった。

 清水さんは悩んだ。団地は交通の便が悪く、客足が遠のいていたからだ。ただ、賃料が安く、思い通りに改装できるのが魅力だった。これまで渋い色や形の器を多く出していたが、なかなか売れない。若い人の洋風の部屋や暮らしに合うポップな器をつくろうと、考えを改めた。

 始めたのは若者目線で値段を抑え、聞いた感想を新たな器に採り入れること。4年ほど前からは問屋を通さず、店頭とネットでの販売に絞った。客の反応をじかに感じようと思った。

 「ここで店を出すまで、自分の作品でご飯を食べたことがなかった。実際に盛ってみて初めて気づいた。『朝からこんな色は嫌』とか、『使いづらい形だなあ』とか」

 毎年10月には、この地域で「清水焼の郷まつり」が開かれる。焼き物の産地の祭りだが、屋台の料理の器はプラスチック製。「環境にもよくないし、器を試してもらう絶好のチャンス」と位置づけ、まつり用の陶器で食べてもらえるコーナーを設けることにした。

 その資金はインターネットで募った。「素晴らしい発想」「素敵な企画」などと賛同した約100人から寄付があった。目標は20万円だったが、大きく上回り50万円を超えた。

 郷まつりには3日間で計3千人ほどが訪れた。清水さんが用意した器は500枚。「この器がほしい」と言ってくれた人には販売し、翌年も使えるよう残りは保管している。

 素焼きの陶器に色をつけた「京陶(きょうとう)人形」でも変化が起き始めた。この地域の「清水焼の郷会館」には、香水の瓶の柄の着物をまとったひな人形や、小さな人形を真ん中に置いた花のリースも並ぶ。「人形の藤原」で働く佐藤一美さん(43)が今風に色つけした作品だ。

 佐藤さんがめざすのは雑貨感覚の人形。店の在庫を引っ張り出し、まつげを盛ったり茶髪に塗ったり。化粧映えする今どきの「詐欺メイク」を施した。昨年の郷まつりで見本を並べると、「かわいい!」と女性が集まってきた。

 工房所長の藤原俊男さん(68)は「やはり伝統的な人形で勝負したい。でも、京陶人形のよさを広げてくれるなら、これはこれでありかな」と話す。(足立菜摘)