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 多くの市町村で、地域と役場とのパイプ役になってきた「行政区長」の身分や役割が、今年春から大きく変わる。非常勤の特別職公務員とされてきたが、地方公務員法の改正で、その要件が厳しくなったためだ。区長制度を続けるか、広報誌は誰が配るのか、今後の住民名簿の扱いは――。自治体の対応は割れる。

対応割れる自治体 個人情報の扱い課題

 「区長さん」は行政からも住民からも頼りにされる存在だ。数十~数百世帯の行政区ごとに1人。地域の状況を把握し、市町村の広報誌を配ったり、行政への要望をとりまとめたり。行政委員と呼ぶ所もある。従来は、学校医や自治体顧問と同じ特別職非常勤公務員として任用。報酬は条例などで定め、基本給と世帯数に応じた額で、年間数十万~100万円程度だ。

 ただ、勤め人には負担が重い。地域の結びつきが弱まり、最近はどのまちもなり手不足に悩んできた。仙台など県内4市は区長制度がなく、広報誌配布は任意組織の自治会(町内会)に有償で委託。仙台市は自治会のないマンションなどはポスティング業者に頼んでいるという。

 総務省は今回の改正で、これまでの区長業務は公務員になじまないとの見解を示している。守秘義務などがあいまいだったため、特別職公務員は専門的知識に基づく助言役などに限ると法を改めたからだ。これを受け、各自治体は議会や住民の意見を聴き、見直しを検討してきた。

 各市に朝日新聞が取材したところ、気仙沼、角田市など5市は、区長(行政委員)の肩書は残すが、「私人」に位置づけることにした。多賀城市は区長制度そのものを廃止。広報誌配布などの仕事は、私人になった区長や、自治会にあらためて委嘱し、部数に応じた謝金を支払う方向だ。

 その際、問題になるのは個人情報の扱い。多くの自治体はこれまで、地域の全住民の名簿や転出入を区長に知らせていた。それを維持するか、配布に必要な世帯主名簿だけにするか、契約に守秘義務をどう盛り込むかなど、整理はこれからだという。

 一方、栗原市は昨年12月の議会で行政区長等設置条例を制定。条例で位置づける形で、特別職公務員の身分を続ける。石巻、大崎市も同様で、広報誌も区長が引き続き配る。登米市の担当者は「9町が合併したため、地域によって区長と自治会の位置づけがまちまち。1年ほどかけて整理を進めたい」と答えた。

名取市、広報誌配布を民間委託へ

 名取市は、これまで行政区長が担ってきた全戸への広報誌配布を、今年春から民間に委託する。区長の仕事の中でも特に負担が大きかったためだ。県内初で、全国でもあまり例のない取り組みになる。

 同市は特別職公務員だった区長を、4月からは私人に位置づける。議論の過程で、133人いる区長にアンケート。広報誌の配布は「民間委託に」「自分で続ける」という人が各4割強と、意見は割れた。

 ただ、区長の平均年齢は71歳。200世帯以上を受け持ち、多い月は8種類もの配布物を仕分ける。体調を崩し、その月だけ郵送に切り替える例もしばしばだった。市は業者を募集し、全世帯と事業所を合わせ3万3千カ所に毎月配る仕事を、年間約3千万円で委託する。全国では奈良市で民間委託の例があるという。

 今野慎介さん(47)は、復興が進む閖上地区の区長だ。震災後二十数世帯だったのが、今は歩いて500世帯以上に配布。その中で困りごとやトラブルを見聞きすれば、役所や自治会につないできた。

 「コンプライアンスの点から、区長が住民の個人情報を持つことには不安があった。民間委託は自然なこと」と受け止める。一方、私人になった区長がどれだけ町内のことに気を配れるか、課題も感じる。「区長よりも自治会の役割が大きくなる。新制度の問題が出てくれば、その都度改善してほしい」と話した。(石橋英昭)