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 トヨタ自動車(じどうしゃ)は今年度中(こんねんどちゅう)に、燃料電池車(ねんりょうでんちしゃ)(FCV)を世界(せかい)で初(はじ)めて一般向(いっぱんむ)けに売(う)り出(だ)します。水素(すいそ)と酸素(さんそ)で電気(でんき)をつくり、モーターを回(まわ)して走(はし)る車(くるま)です。二酸化炭素(にさんかたんそ)(CO2)や排(はい)ガスを出(だ)さないため、「究極(きゅうきょく)のエコカー」とも呼(よ)ばれます。クルマ社会(しゃかい)は大(おお)きく変(か)わるのでしょうか。

 ■排ガスゼロ、長距離も走れる

 ガソリンをエンジンで燃やして走る自動車が発明(はつめい)されて1世紀余(せいきあま)り。クルマは人類(じんるい)に自由(じゆう)な長距離(ちょうきょり)の移動(いどう)をもたらし、くらしを便利(べんり)なものにした。

 一方で、負(ふ)の遺産(いさん)も生(う)んだ。自動車がまき散(ち)らす排ガスによって大気(たいき)はじわじわと汚(よご)された。走るときに出るCO2は、地球温暖化(ちきゅうおんだんか)の一因(いちいん)にもなった。

 そもそもガソリンの元になる原油(げんゆ)は埋蔵量(まいぞうりょう)が限(かぎ)られており、いつかはなくなる。将来(しょうらい)をにらんで自動車メーカーは色々(いろいろ)なエコカーの開発(かいはつ)に取(と)り組(く)んできた。だが、どのエコカーも弱点(じゃくてん)を完全(かんぜん)には克服(こくふく)できていない。

 日本で人気(にんき)の高(たか)いハイブリッド車(HV)は、エンジンとモーターを組み合(あ)わせて走る。モーターの回転(かいてん)の抵抗力(ていこうりょく)でブレーキをかけながら電気をつくる仕組(しく)みを入れることで、ガソリンの使用量を大きく減(へ)らした。ただ、ゼロにすることはできず、排ガスやCO2も出る。

 電動(でんどう)モーターで走る電気自動車(EV)は排ガスやCO2は出ないが、1回の充電(じゅうでん)で走れる距離(きょり)が、ガソリン車とくらべて短(みじか)いのが弱点だ。代表的(だいひょうてき)な日産(にっさん)自動車の「リーフ」で約200キロ。東京(とうきょう)―熱海間(あたみかん)をやっと往復(おうふく)できる程度(ていど)だ。

 FCVはHVやEVの弱点を克服(こくふく)できる可能性(かのうせい)を秘(ひ)める。

 高圧(こうあつ)でためた水素と空気中(くうきちゅう)の酸素を化学反応(かがくはんのう)させて電気をつくり、モーターを回して走る。出るのは発電時(はつでんじ)にできる水だけ。排ガスやCO2は出ない。1回の燃料補給(ほきゅう)で走れる距離は、ガソリン車とほぼ同じ約700キロ。東京―名古屋(なごや)間を往復できる。

 FCVは、電気をつくる燃料電池(Fuel Cell)と車(Vehicle)の頭文字(かしらもじ)からとった略称(りゃくしょう)だ。ホンダも2015年に、日産も17年までにそれぞれFCVを売り出す予定(よてい)だ。

 ■値段はまだ高級車並み

 FCV開発の歴史(れきし)は長い。

 古くは米ゼネラル・モーターズが1966年に試作車(しさくしゃ)をつくった。国内(こくない)ではトヨタが96年に試作車を発表(はっぴょう)。2002年にはホンダとともに政府などに納入(のうにゅう)した。小泉純一郎首相(こいずみじゅんいちろうしゅしょう)(当時〈とうじ〉)が官邸(かんてい)で乗(の)って話題(わだい)を集(あつ)めた。

 だが、一般向けに売り出すことはすぐにはできなかった。生産(せいさん)コストが高かったためだ。特に燃料電池に使う貴金属(ききんぞく)の白金(はっきん)が高価(こうか)だったことがネックだった。1台1億円(おくえん)といわれた価格(かかく)は開発が進(すす)むにつれて下がり、今年度中にトヨタが売り出すFCV「ミライ」は約700万円になった。かなり安(やす)くなったが、まだ高級車並(こうきゅうしゃな)みだ。このため、政府は1台あたり200万円を超える補助金(ほじょきん)を出して、販売(はんばい)を後押(あとお)ししようとしている。

 価格以外(いがい)に乗り越(こ)えなければならないハードルは多(おお)い。

 水素を補給する水素ステーションを増やすことも必要だ。一般の人が使えるステーションは国内に1カ所しかない。政府は、15年度までに100カ所、25年度までに1千カ所に増やすことを目指(めざ)すが、それでもいまのガソリンスタンドの約3万5千カ所にはほど遠(とお)い。

 水素の販売価格がガソリンに比べて高いことも、普及のカベになっている。

 「究極のエコカー」とも呼ばれるが、そうとはいえないとの指摘(してき)もある。FCV向けの水素は、液化天然(えきかてんねん)ガス(LNG)などの化石(かせき)燃料と水蒸気(すいじょうき)を反応させてつくる。このときに出るCO2も合わせると、FCVが走る時のCO2排出量(はいしゅつりょう)はHVとさほど変わらないという。

 FCVは新(あら)たなクルマ社会(しゃかい)を切(き)り開(ひら)くのか。自動車メーカーと政府、エネルギー業界(ぎょうかい)などが力を合わせて、課題(かだい)を解決(かいけつ)できるかがカギになる。(大内奏)

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 次回は「アフリカで広がるエボラ出血熱」を学びます。取り上げてほしいテーマをお知らせください。

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