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 2014年度朝日賞と第41回大佛(おさらぎ)次郎賞、第14回大佛次郎論壇賞、14年度朝日スポーツ賞の贈呈式が28日、東京の帝国ホテルで開かれた。朝日賞の山田太一さんら4人、大佛賞の長谷川郁夫さん、大佛論壇賞の遠藤典子さん、スポーツ賞の羽生結弦選手のスピーチを紹介する。

 ■被災地での貢献、今後も 建築家・坂茂さん(朝日賞)

 建築家になってみて、実はこの仕事に随分がっかりしました。建築家というのはもっと一般社会のために役立っていると思っていましたが、特権階級の方々のために仕事をすることが多い。立派な建築をつくり、目に見えない権力や財力を世間に知らしめるわけです。医者や弁護士と違い、お客さんがハッピーなときにお付き合いし、好きなものをつくらせてもらう恵まれた仕事でもあります。

 建築家も、もっと自分の知識や経験を使って、社会のために何かしなければいけないんじゃないか。そう思っていたときに、1994年にルワンダ内戦、95年には阪神大震災で、貧しいシェルターで苦労している方や住む家がない方、避難所でプライバシーのない生活を送っている方がいることを知り、現地に飛び込みました。避難所や仮設住宅づくりに、我々建築家が加われば、もっと住み心地がよいものになるのじゃないか。そういう思いで、20年間活動してきました。

 朝日賞は、尊敬する小澤征爾さんや三宅一生さん、磯崎新さんらが受賞された憧れの賞です。もらった以上、そういう方々の業績に負けない貢献をこれからもしていきたいと思います。

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 ばん・しげる 斬新な発想に基づく設計活動と建築による被災地支援

 ■大勢の力、ドラマ支えた 脚本家・山田太一さん(朝日賞)

 賞をいただくことになって、実は我が家で一つだけ言い争いがありました。

 「贈呈式に招待する方を、40人を上限にリストにしてほしい」と担当の方に言われ、私は驚いて即座に「一人もいません」と答えました。「皆さん忙しいのに、わざわざホテルまで来て祝ってやろうと思う人はいません。ライターの世界はそういうものです」と。

 すると、女房が怒り出しました。「だいたいあなたが一人だけでドラマを作ったことなんて、一度もないでしょ。必ずプロデューサーやディレクターや俳優さんがいて、出来上がったんでしょ。その方たちに知らん顔で、自分だけトロフィーをもらってしまうの? お世話になった人たちに報告すべきでしょ」と。

 その夜、自分がお世話になった方々をリストアップしていきますと、たちまち100人を超えました。ただ、気がつくと、その半分くらいは亡くなっています。夜が白々と明けるまでかけて、30人ほどに絞り込み、招待状を出しました。

 きょう、この贈呈式後のパーティーで私と談笑している方がいたら、どの方も日本のテレビドラマ界のエリートだと思ってくださって間違いありません。

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 やまだ・たいち 長年にわたって日本のテレビドラマ作りを牽引(けんいん)

 ■新薬開発、愚直さと運と 北里大学特別栄誉教授・大村智さん(朝日賞)

 私が発見したエバーメクチンは、当初予想できなかった記録ずくめの実績を持つことになりました。

 まず動物薬として最も多く使われました。そして、ヒトの河川盲目症とリンパ系フィラリア症にも効くことが分かりました。年2億数千万人が薬を飲み、二つの熱帯病はまもなく撲滅されようとしています。このような役割を果たした抗生物質はありません。これは新種の放線菌によってのみつくられています。その上ありがたいことに、米メルク社に共同研究を提案し、研究を推進した私に朝日賞をいただけました。

 これまで480成分の物質を発見しましたが、愚直に根気よく研究していたところに幸運が訪れました。毎年何千という微生物を採取して新しい物質を探し、構造を明らかにします。

 有用なものを開発するには、微生物学、化学、医学、薬学、獣医学など広大な分野の専門家との共同研究で初めて目的を達成できます。私たちが発見した物質から開発された医薬品などは26種にのぼります。優れた研究者に巡り合えたことに感謝しています。これからも、世の中に役立つ化合物の発見に努めて参りたいと思います。

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 おおむら・さとし 抗寄生虫薬の発見・開発と国際保健への貢献

 ■医療で世界をより良く 熊本大学大学院教授・満屋裕明さん(朝日賞)

 新しい医療技術を生み出す研究は、難しいことを学びながら謎を解き続ける刺激的でエキサイティングな職業だと私は言い切りたい。国民、特に若い人たちに、サイエンスに喜びを感じることは、ファッションやハリウッドと同様「カッコいい」ことと思ってもらいたい。サイエンティストは国民をがっかりさせてはいけません。大きすぎる期待を抱かせてもいけません。

 私は臨床医あがりで、エイズ薬AZTをつくることはできません。AZTは1964年、ホロウィッツ博士が優れた抗がん剤になれば、と合成した化合物です。しかし、がんに効果はなく、85年、私が34歳のときにエイズの病原体に対する強力な効果を確認するまで、ひっそりと待たなければなりませんでした。

 ホロウィッツ氏は私に「成功とは何か」という詩をくれました。「しばしば、そして、たくさん笑うこと(中略)。世界を少しだけより良い場所にして去ること。あなたが生きたことで誰か一人でも一生が良いものとなったと知ること」

 私が、そして皆様が進んでいる道が、この「人生の成功」につながると願いたい。これから一層の奮闘を続けなければと感じます。

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 みつや・ひろあき 抗エイズ薬の発見と治療法確立への貢献

 ■評伝文学、入り口立てた 大阪芸術大学教授・長谷川郁夫さん(大佛次郎賞)

 栄誉ある賞に感激するとともに、内心ほっとしております。

 受賞が決まって、大佛次郎とゆかりがあるかと問われ、即座に「鞍馬天狗」と答えました。鞍馬天狗は、一面では、倉田典膳という勤王側のシンパサイザー(共鳴者)と角兵衛獅子の杉作少年との師弟愛の物語です。吉田健一さんの曽祖父は大久保利通ですから、吉田さんは勤王の志士になる資格がある。鞍馬天狗に代わり、吉田さんが賞を下さったのではないか。この妄想が私を楽しい気分にさせてくれました。

 優れた評伝が文学であることは間違いありませんが、評伝を文学にするのは難しい。ルポルタージュや聞き書きの段階にとどまってはいけない。文学の言葉と格闘し、言葉だけの世界を築き、対象を立ち上がらせなくてはならない。

 残念ながら、私の作品はオマージュの段階だと思います。ただ、一人勝手に歌を歌い出さないように気持ちにブレーキをかけ、原稿用紙を積み重ねました。

 今、評伝文学の入り口に立ったことを認めていただいたようでうれしく感じます。最初に、ほっとしたと申しましたが、そんな気持ちを表したものです。

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 はせがわ・いくお 受賞作『吉田健一』(新潮社)

 ■原発政策、「もし」を検証 公共政策研究者・遠藤典子さん(大佛次郎論壇賞)

 福島原発事故から、まもなく4年が経ちます。東京電力が国から援助を受けて支払わなければならない損害賠償額は6兆4千億円に上ります。まだまだ膨らんでいく可能性があり、その持続性には難しいものがあると感じます。

 もし、もともとの原子力損害賠償法の規定にあるように、東日本大震災を「天災」として東電を免責していたら……。もし、東電に会社更生法を適用していたら……。

 歴史の「たら・れば」を考えても仕方がないとも言われますが、取り得たはずの選択肢をもう一度、分析して検証することには、学問的な意義があります。また、政策のあり方を提言していくことも、研究者である私には課せられていると思い、意気込みを新たにしています。

 経済誌のジャーナリストだった私が研究の道に入ったきっかけは、10年ほど前の大病です。その時、目の前の生存率に頭を悩ませるより、長期的な視点を持ちたいと思い、大学院に進みました。もし病気がなければ、研究の道を選んではいなかったと思います。

 受賞は、みなさまのお力添えのおかげです。ありがとうございました。

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 えんどう・のりこ 受賞作『原子力損害賠償制度の研究』(岩波書店)

 ■選手・人として研鑽積む フィギュアスケート選手・羽生結弦さん(朝日スポーツ賞)

 受賞した羽生選手は贈呈式を欠席した代わりに「これまで受賞された方々は、皆様が世界で大活躍されており、この賞の重みを痛感しております。今後もアスリートとして、そして、人として、日々研鑽(けんさん)を積んでまいりたいと思います」とのメッセージを寄せた。

 ソチ五輪はショートプログラム(SP)で世界歴代最高得点で首位に立ち、フリーでも1位。前評判の高かったカナダのパトリック・チャン選手を抑えた。日本勢としては、2006年トリノ大会の荒川静香選手に続く五輪のフィギュアスケートの優勝だったが、男子では初の金メダル。ファンを歓喜させた。

 昨年11月の中国杯の練習中に他選手と衝突する事故にあったが、それを乗り越えてグランプリファイナルで2連覇、全日本選手権で3連覇を勝ち取った。

 その後、手術、入院したが、現在は退院し、リハビリを進めている。既に氷の上でジャンプの練習もしているという。「今は、まずは体調をしっかりと戻していきたい。世界選手権大会では、今できる演技をしっかりしたい」と、連覇がかかる3月の世界選手権(中国・上海)出場への決意を示した。

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 はにゅう・ゆづる 五輪のフィギュアスケート男子でアジア勢初の優勝

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