[PR]

 朝日新聞デジタルのアンケートでPTAに改善してほしい点を尋ねたところ、「活動内容の簡素化」「役員・係の決め方」「全員加入が当たり前のこと」が上位に挙がりました。では、どうやったら改善できるのか。実際に試みた人たちを取材班が訪ねてみました。

 ■入退会自由、会費もゼロ

 親はみんな強制的に参加しなければいけないのか。そんな疑問から改革が始まったPTAがあります。

 沖縄の那覇市立識名(しきな)小は、加入するかしないかは自由、加入した場合も会費ゼロのPTAです。1学年3~4学級あり、保護者の加入率は1割ほど。主な活動は月1回の「ミーティング」のみです。

 改革を進めた建設会社役員の福里浩明さん(46)は次男が2年生の2008年度から3年間、会長を務めました。当初は「ごく普通の会長」でしたが、途中で「本来PTAは入退会自由」と知り、保護者に入会の意思を聞かないのはおかしいと気づいたそうです。

 「いきなり変えようとしても難しいだろう」と、まずは会長2年目に「強制感をなくす」ことから着手。保護者会でのクラス役員決めを廃止し、希望者にやりたい活動をしてもらう形にしました。3年の任期を終えていったんは副会長になりましたが、3男が3年生になった13年度、再び会長に推され「大改革をする」ことを条件に就任しました。

 ■話し合いを重ね説得

 最初の1年は、広報やベルマークなどの委員会活動をすべて休止し、「新しいPTAを考える会」を4回開催することに。入退会を自由にすることや活動内容について議論しました。保護者からは、「脱退したら子どもに不利益はないか」「組織自体が成り立たないのでは」といった不安も出ましたが、「非会員を差別しない」「組織を無理して維持する必要はない」などと説明しました。

 学校側は、お金の不安を抱いていました。会費の一部を花の苗やゼッケンの購入などに充てていたため、任意にして会費が減れば、影響が出るからです。当時の大湾清彦校長は「任意になれば、子どもの教育環境に支障が出るのではないかと不安だった」と振り返ります。

 学校との話し合いの中で、保護者から「本来は公費で負担すべきものだ」という意見もありました。ですが、「本当に必要な予算が足りないなら払ってもいい」と、PTA会費としてではなく、年間500円を学校に納めることで合意しました。

 また、市のPTA連合会から脱退したため、一部の保護者から「連合会主催のイベントに参加できなくなる」と不満が出ました。「参加費を払うから出たい」とひかない保護者に対して、校長を交えた話し合いの場を2回設け、説得したそうです。こうして14年度、初めて入会届を配布し、入退会自由の新PTAがスタートしました。

 ■教師と意見交換の場

 識名小のPTA申込書には、「保護者と教師が自由な意見交換をすることを目的とした会」と記載されています。保護者が教師に聞いてみたいこと、保護者が学校でやってみたいこと。そんなことについて意見交換する場になっています。

 前のPTAのときにあった活動がすべてなくなったわけではありません。本の読み聞かせやベルマークなど、保護者がやりたいものは続いていますが、PTAとは別の有志のグループが活動しています。

 朝日新聞のPTAアンケートに集まった不満を見て、福里さんは「こんなことほんとにあるの?」と驚いたそうです。「『子どものため』という言葉で保護者を強迫しないで。PTAなんてそんなにたいそうなものじゃないですよ」と話しています。

 (田中聡子)

 ■活動簡素化、無理せずに

 取材班には、従来の形のまま、少しずつ改革を進めているPTAからのメールも寄せられました。

 川崎市立下沼部小学校のPTA副会長近藤康恵さん(51)は、4年前に広報委員会の副委員長を経験。当時の委員長だった女性と、活動の簡素化という方向で一致し、年5回だった広報誌の発行を4回に減らしました。会合に出てこない委員もいましたが、「ボランティアだから、無理しない」を合言葉にしました。

 2年目は、区のPTA協議会の担当役員に。小さな子がいる母親も、夜の懇親会出席を無理強いされる様子を見て疑問を感じました。

 3年目から、改革を胸に秘め、副会長に。本部役員が集まる運営委員会で、廃品回収を週2回から1回に減らす案を出しました。すると、前の会長から自宅に電話があって反対されたそうです。近藤さんは、区の収集日が減っていること、PTAの収入に影響がないことなど、データで説明し、納得してもらいました。

 新しい会長は改革に前向きで、会費の集め方を児童ごとから世帯ごとに変えたり、仕事が多い書記などのポストは増やし、仕事を分散したりすることができました。クラスごとに選んでいた委員は、学年ごとの選出に見直しました。

 役員決めでは、家庭の事情がある人が、クラスのみんなの前で公表しなくていいように、前年度の秋に封書で希望をとり、免除しました。「不公平だ」と言われることも。でも、「PTA活動はもともと公平じゃないもの。各家庭で事情は違う」と説明しているそうです。

 委員や役員を経験した人には、改善点のアンケートを取り、「運営委員会だより」で公開しています。「言っても変わらないと感じている人は、意見を言わない。だから実際に言えば変わると実感すれば、意見を言いやすくなります」

 今は、委員長の立候補が少ないことが課題になっています。役員会では、「経験者には、卒業式で優先席に座ってもらうなど特典をつけようか」というアイデアも出ています。

 (杉原里美)

 ■見直し提案、賛同広がらず

 PTAを変えようとして、挫折しそうになることもあります。

 メールをいただいた兵庫県三田市の和田知恵さん(37)は、学年委員を務めた2年前、多すぎる活動に対する疑問を本部に伝えましたが、何も変わりませんでした。今年4月、クラスの役員選出でトラブルが発生。PTAには一般会員の意見を伝える場がないことを総会で訴えると、会長は「意見箱の設置を検討します」と回答したそうです。

 静岡県西部にある小学校の児童の父親は、「くじで副会長になった」とメールを寄せてくれました。役員になる前の説明は「毎月1回の会議に出席するだけ」でしたが、実際は学校内外に何度も出向かざるを得ませんでした。そこで年間業務を「見える化」した資料を作り、活動の見直しを役員会で提案しました。地元の祭りでお酒を配るのは廃止。負担金を納めて研修などに動員される市P連は退会。何の成果も上がらない役員・教員の飲み会は欠席――。

 しかし、前校長や前会長が壁になりました。「『子どものため』という視点がないのは残念だ」「これまでの慣例をやめたら影響が分からない」と頭ごなしに否定されたといいます。

 一時は、退会することも考えましたが、今年度は会長に就任。幸い、新任の校長や仲間の役員たちは、改革に関心を持ってくれています。「目をつぶれば1年の我慢、そっちの方がずっと楽。でも自分が嫌なことを次の人に残すわけにはいかない」。そう自分に言い聞かせているそうです。

 (堀内京子)

 ■「情報共有したい」「会計の明瞭化を」

 朝日新聞デジタルで実施したアンケート「どうする?PTA」に寄せられたPTAに望む改善点はグラフの通りです。「子供の通う学校では、2年前から強制加入、くじ引きでの役員決めを一切廃止し、任意加入、役員は立候補制。会費も半額くらいに」(埼玉県・30代男性)という実践例のほか、「任意加入の周知。事業仕分け。会計明瞭化。上部団体の存在意義の説明」(兵庫県・40代女性)を求める声、「全国の改革事例の情報を共有化したい」(鹿児島県・50代男性)などの書き込みもありました。

 ■意欲と理解と共感が必要

 PTA改革の実現には、「変化を嫌がらない会長と、改革に理解ある校長、共感する何人かの役員」が重要でした。一方で、家庭や仕事にフル回転の保護者たちが、反対の声を説得して変えていく心理的・時間的な負担は大きすぎるとも感じました。

 取材やアンケートからは、学校や自治会など個々のPTAでは変えにくい構造的な問題も浮かんでいます。どうすればいいのか。最終回の次回は、日本PTA全国協議会の会長インタビューを掲載します。

 ◇次回24日は『PTA:5 必要か不要か』

 ◇ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするか、〒104・8011(住所不要)朝日新聞オピニオン編集部「PTA」係へ。朝日新聞デジタルのフォーラムページはhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますです。

こんなニュースも