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 安倍政権の安定で、保守系の世界は我が世の春――。と思いきや、ちょっと状況が違うようだ。

 ■政治資金巡りお互いに批判

 中国や韓国、公明党、朝日新聞やリベラル勢力を斬りまくり、講演、執筆活動を続ける田母神俊雄・元航空幕僚長(66)。だが23日に出演したインターネット配信の番組では、少し様子が違った。今回の攻撃対象は、行動派の保守系言論人として知られる水島総氏(65)。保守色の強い番組を制作、ネットなどで配信する「日本文化チャンネル桜」(CH桜)の社長だ。

 弁護士も同席し、水島氏の金銭絡みの「疑惑」について語る田母神氏は、司会者から「『右』の有力なタレント2人が、いがみあっても……」などといさめられたが、約1時間にわたって水島氏の批判を続けた。

 両氏は近年、二人三脚で運動を展開してきた。2010年、水島氏を中心に結成した運動団体「頑張れ日本!全国行動委員会」で田母神氏が会長を務め、昨年2月の都知事選では、水島氏は田母神氏の選対本部長に就き、予想を大きく上回る61万票を獲得した。

 しかし2月、都知事選で集めた政治資金について、金銭疑惑が出てきた、と水島氏がCH桜で指摘した。「浄財を預けてくれた方々に申し訳できない。選対本部長だった私にも問題を明らかにする責任がある」と水島氏は言う。

 後日、釈明会見を開いた田母神氏らは事務所スタッフによる約3千万円の流用疑惑について明らかにし、「誠に申し訳ない」「私の監督不行き届き」と謝罪する一方、「都知事選後に水島氏から残金を水島氏側の政治団体へ移すよう求められた」とぶちまけた。「事実無根だ」と水島氏は猛反発し、CH桜で「疑惑は3千万円にとどまらない」と追及を続けた。

 ■14年都知事選、確執生まれる

 つい1年ほど前まで、盟友関係にあった2人の確執は、都知事選がきっかけだったといわれる。

 選挙終盤、保守色を抑えて幅広い層の支持を得るよう促す水島氏に対し、保守層取り込みを図る田母神氏は「侵略戦争、南京事件、従軍慰安婦、全部ウソ」などと自説を前面に押し出した。このころから運動論の相違が生じ始めたとされる。新党構想などでも、意見が対立、今回の問題で溝は決定的になった。

 田母神氏は「けんかを続けるつもりはないが、水島氏が攻撃するなら続ける。早く決着して次へ進みたい」と話す。水島氏は「決して保守の泥仕合や内紛ではない。正義を貫き、不正の真相を解明する責任を果たすためだ」と言う。

 ■打倒民主政権、共通の敵失う

 保守派の評論家、古谷経衡(つねひら)氏は「保守と一口に言っても、ネット右翼や陰謀論者、民族派までと幅広い。過去の戦争を巡る評価についての論争も起きており、この問題に限らず、保守の亀裂が表面化してきた」と話す。

 保守系の雑誌やサイトなど、論争の場も多種多様だ。また、言論の場だけに収まらず、争いの舞台が法廷に移ったり、街宣車が登場したりする場合もある。

 その上で古谷氏は「数年前までは、打倒民主党政権で団結していたが、念願の安倍政権が誕生し、大きな敵がいなくなった。中国の抗日民族統一戦線が日本の敗戦で内戦を再開したように、共通の敵を失った政治運動が陥りがちなことだ」と分析している。

 (秋山惣一郎)

 <訂正して、おわびします>

 ▼5月29日付朝刊社会面「ニュースQ3 昨日の友は今日の… 保守系に異変?」の記事で、「都知事選で集めた政治資金約1億2千万円のうち、約3千万円を田母神氏の事務所スタッフが流用していた、と水島氏がCH桜で公表した」とあるのは、「都知事選で集めた政治資金について、金銭疑惑が出てきた、と水島氏がCH桜で指摘した」の誤りでした。事務所スタッフによる約3千万円の流用疑惑が具体的に明らかになったのは、田母神俊雄氏が後日に開いた記者会見の場でした。

 

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