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 安保法制をめぐる国会審議で、国連平和維持活動(PKO)協力法改正案に新たに盛り込まれた治安維持活動の是非が焦点の一つとなっている。日本と同じく敗戦国でありながら、「憲法解釈の変更」で海外派兵に転じたドイツは、後方支援に活動を限ったアフガニスタンで多くの犠牲者を出した。野党からは「日本も同じ道を歩まないか」との懸念が示されている。

 「この法案を通して自衛隊を紛争地で治安活動に参加させれば、アフガンに派兵して多くの犠牲者を出したドイツ軍と同じ立場に、日本の自衛隊を置くことになるのではないか」

 共産党の志位和夫委員長は28日の衆院特別委員会で、2002年からアフガンの国際治安支援部隊(ISAF)に参加し、事故などを含めて計55人の死者を出したドイツ軍を引き合いに出した。

 ドイツは戦後、憲法に当たる基本法で侵略戦争を禁じ、北大西洋条約機構(NATO)の域外派兵を行ってこなかった。1991年の湾岸戦争でも日本と同様に多国籍軍には参加せず、経済支援にとどめた。

 だが、米国から「カネを出しただけ」などと批判され、当時のコール政権は基本法の解釈を変更してNATO域外にも派兵する方針に転換。94年、連邦憲法裁判所が国会の事前承認がある場合に限ってドイツ軍のNATO域外活動を合憲と認め、これを契機にドイツの海外派兵が進んだ。

 01年9月の米同時多発テロで、NATOが密接な関係にある他国のために武力を使う集団的自衛権を行使して米国主導のアフガン戦争の支援を決めると、当時のシュレーダー政権も軍を派遣。その後、同年12月に国連安全保障理事会決議が採択され、加盟国が一致して制裁を加える集団安全保障の枠組みで治安維持と復興支援を目的としたISAFが発足すると、ドイツは02年1月から参加した。

 ドイツは治安が比較的安定しているとされたアフガン北部を担当したが、次第に現地の情勢は悪化。戦闘に巻き込まれる事例も生じ、ドイツ軍によると02年からISAFの任務が終了する昨年までに、帰還後の心的外傷後ストレス障害による自殺者などを含めて兵士55人が死亡し、このうち6割強の35人は自爆テロや銃撃など戦闘による犠牲者だったという。

 志位氏の質問に対して、安倍晋三首相は「停戦合意をはじめとする参加5原則が満たされることが前提。掃討作戦のような活動はできないし、戦闘参加はできない」と指摘。ただ、ISAFのような活動に参加するかどうかについては「今ここに再現して判断することが困難であることから、(参加可能かどうかは)一概には言えない」と述べた。

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 朝日新聞は昨年6月15日付朝刊にシリーズ企画「集団的自衛権 海外では」の一つとして「平和貢献のはずが戦場だった/後方支援、独軍55人死亡」などの見出しでドイツ軍のアフガニスタン派遣に関する記事を掲載しました。ドイツ軍は当初、NATOによる集団的自衛権で兵士を派遣し、集団安全保障の枠組みに切り替えましたが、記事ではそうした経緯に触れなかったため、派遣全体が集団的自衛権に基づくという誤解を招きました。今回、関連の記事を掲載するにあたり、記事の中で経緯を詳しく説明しました。

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