[PR]

 水族館の人気者、イルカをめぐって国際的な問題が起きています。日本の伝統的なイルカ漁が残酷(ざんこく)だとして批判(ひはん)が集まり、水族館などの国際組織はこのままなら日本をメンバーから外すと伝えてきました。イルカショーはこれからも見られるのでしょうか。

 ■追い込み漁での入手に非難

 問題となっているのは、和歌山県太地町(たいじちょう)で盛(さか)んに行われているイルカの追い込(こ)み漁だ。複数の船で金属棒(ぼう)をたたき、イルカの群れを浅瀬(あさせ)がある入り江(え)に追い込んで捕(つか)まえる。

 太地町で年に1千頭前後が捕まえられている。このうち1、2割(わり)ほどが国内外の水族館向けに販売(はんばい)されている。

 63の水族館と89の動物園が入る「日本動物園水族館協会(JAZA)」の会員でイルカを飼育している施設(しせつ)は34ある。太地町のイルカを買っている水族館は20以上あり、明らかにしているだけで約200頭に上る。

 スイスに本部を置く国際組織「世界動物園水族館協会(WAZA)」は2004年の年次会合でイルカ追い込み漁は問題だと非難決議(ひなんけつぎ)をした。WAZAは残酷な方法で野生の動物を捕まえることを禁じており、その方針に反しているといっている。

 しかし、日本の水族館はその後も追い込み漁で捕らえたイルカを買い続けてきた。このため、WAZAは今年4月、JAZAの会員資格(しかく)を停止(ていし)することを決めた。1カ月以内に追い込み漁で捕まえたイルカを買うのをやめなければ、今度は会員を辞(や)めさせると通告(つうこく)してきた。

 WAZAの会員でなくなると、スマトラトラやレッサーパンダといった珍しい動物の子どもを産ませる(繁殖〈はんしょく〉)時、世界各地の動物園や水族館に協力してもらうのが難しくなる。

 WAZAに残るか、出るか。二者択一(にしゃたくいつ)を迫(せま)られたJAZAは、会員の投票で決めることにした。5月20日の開票結果は、有効票142票のうち、「残る」が99票、「出る」が43票だった。この結果、JAZAは追い込み漁で捕らえたイルカを買うことを禁止することにした。荒井一利(あらいかずとし)会長は「今後は飼育(しいく)しているイルカの繁殖をすすめたい」と話した。

 ■欧米では繁殖が主流

 イルカに子どもを産ませ、大きくなるまで育てるのは簡単(かんたん)ではない。繁殖のためにはお金と時間がかかる。また子イルカは病気の治療(ちりょう)がしにくく、飼育するのはとても難(むずか)しい。JAZAによると、この5年間で計57頭のバンドウイルカが誕生(たんじょう)したものの、そのうち大半は生まれてすぐに死んでいる。

 JAZAが禁止したのは、追い込み漁で捕まえたイルカを今後新たに買うことなので、すぐにイルカショーができなくなるわけではない。だが、「イルカの寿命(じゅみょう)は30年前後。長い目で見たら問題が出てくる」と心配する水族館もある。これまで通り太地町からイルカを買うために、JAZAから脱退(だったい)する水族館が出てくるかもしれない。

 日本では人気のイルカショー。だが、動物保護の意識が強い欧米(おうべい)などでは、イルカに芸をさせるなど見せ物として扱(あつか)うのはよくないと考える人が増えている。オーストラリアではイルカショーをやめる動きが広がっている。飼育基準(きじゅん)が厳(きび)しくなった英国では水族館からイルカが姿を消した。

 追い込み漁への国際社会からの風当たりも強くなっている。欧米の水族館では繁殖が主流だ。追い込み漁に反対する見方の映画「ザ・コーヴ」が2009年に米国で上映され、翌年に米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞し、世界の注目を集めた。14年1月には、キャロライン・ケネディ駐日(ちゅうにち)米国大使がツイッターで「追い込み漁の非人道性(ひじんどうせい)について深く懸念(けねん)しています」と書き込んだ。

 太地町の漁業者たちは、追い込み漁は伝統であり、今後も漁を続けると反論(はんろん)する。JAZAも、文化としての追い込み漁を否定しているわけではないといっている。(岡田昇)

 ◆次週、この面は休載します。次回は7月4日です。ニュースのおさらいは「18歳選挙権」を学ぶ予定です。

 ■朝日小学生新聞

 今後の予定は「ネパールにドーム型テントを/マイナンバー制度とは/除菌と殺菌のちがいは?」です。

 詳しい紙面などはhttp://www.asagaku.com別ウインドウで開きます

 ■ジュニアエラ7月号

 小中学生向けニュース月刊誌。特集は「女と男はどこが違うの?」。サッカー日本代表新監督や日本の新しい世界文化遺産登録候補の話題も。定価490円で発売中。

 

こんなニュースも