[PR]

 高齢者が住み慣れた地域で介護や医療を受けながら、最期まで暮らし続ける――。団塊の世代がすべて75歳に達する2025年を見据え、政府は在宅に軸足を置くこの「地域包括ケアシステム」の実現を急ぐ。

 これは介護保険サービス費用を抑える狙いがある。政府は4月にサービスの対価である「介護報酬」を改定した際に、在宅介護を促す仕掛けを盛り込んだ。

 自宅にヘルパーを呼ぶ訪問介護では、介護の必要度が比較的軽い要介護2、1の人が「20分未満」の身体介護を24時間いつでも利用できるようになった。これまで日中(午前8時~午後6時)は要介護3以上に限定。だが、朝晩の着替えや洗顔、歯磨きといった「短時間介助のニーズが意外とあった」(厚生労働省幹部)として見直した。時間が短い分、利用料は安い。

 施設に通ってサービスを受けるデイサービスでは、一人暮らしの高齢者の送迎時の手伝いも保険で利用できるように。着替えや家の消灯、窓の施錠が対象だ。

 24時間いつでも介護と看護を提供する定期巡回・随時対応サービスは、在宅介護の柱だ。12年度に新設されたが、全国で281カ所(13年10月時点)にとどまり、参入を促すため報酬を増やした。ただ、要介護3の典型的な利用者の自己負担は月額約900円(1割負担の場合)ほど増える。このため、1割負担の支給限度額を超えた分が全額自己負担にならないような仕組みも採り入れた。

 家族が介護を理由に会社を辞める「介護離職」は、年間10万人いるとされる。在宅でのサービスを利用しやすくすれば、これに歯止めをかけることができる。

 明治安田生活福祉研究所などが昨夏にインターネットを通じて調べたところ、親の介護を経験した40歳以上で介護開始時に正社員だった約2300人のうち25%が仕事を辞めて介護に専念していた。このうち13%は、親が要介護状態になって「すぐ」に辞めていた。

 「仕事と介護の両立」も狙った。介護保険で使えるデイサービスの利用時間を1日12時間から2時間延長。3月まで12時間を超えた分は全額自己負担だったが、超えた2時間分は100円(1割負担の場合)の追加負担で済む。介護する家族が残業で遅くなる時などの利用を想定している。

 ただ、効果に懐疑的な声もある。関東地方の独身男性(47)はこの夏、会社を辞めた。車で2時間ほど離れた所で一人暮らしの母親(73)が認知症になり、電化製品の使い方などがわからなくなった。男性は「在宅サービスが手厚くなったところで、片時も一人でおいておけない。在宅では打つ手がない」と指摘する。(蔭西晴子)

 

こんなニュースも