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 本音炸裂(さくれつ)だった。約850万人が加入するピラミッド型組織、日本PTA全国協議会(日P)の頂点に立つ前会長の発言だ。

 ――PTAで「大人のいじめ」のようなことも起きています。

 「人が集まるところでは、いじめのようなことは起こるものです」

 ――(PTAへの不満の背景には)共働きの増加など家庭環境や時代の変化があるのでは。

 「『共働きだから忙しい』という理屈はよく分かりません。私が一番忙しいと思います」

 立ち話ではない。フォーラム面で5月に5回続けたPTA特集と、読者約3千人の声を受けたインタビューでのことだ(デジタル版で無料で読めます)。

 PTAは入退会自由だが、実際には保護者は入会を拒みにくい。そして、多くの公立小中学校のPTAは、保護者が払った会費の一部を上部団体に上納し、PTA大会や講演会に保護者らを動員する。日Pの前会長は、フォーラム面のデジタルアンケートで過半を占めたPTA不要の声の真意を聞かず「帰属意識や規範意識、地域を思う気持ちなど、PTAは人間形成にもってこいの場」「安定した日本の労働力を確保することにもつながる」と主張した。

 日P会長は、地元のPTA会長、市や県のPTA連合会の役職を兼務することが多く、歴代の役員たちの多くは「自営業」「子ども複数」「男性」だ。保護者の代表というにはあまりに偏っている。

 4年前からPTAを取材してきた私は、保護者が有休を使ってPTAの生け花教室に参加したり、子どもを家に残して宴会でお酌をさせられたりする話にはもう驚かない。

 強い同調圧力の中で、親は「子どもが人質になっている」と感じ、会費の使途や活動内容が不透明だと思っても口には出せず、貴重な時間と気力を浪費させられていく。楽しく役立つPTAがある一方で、ブラック企業と変わらないような「ブラックPTA」も放置されているのだ。

 心配なのは、PTAが国の政策にお墨付きを与えたり、国の政策を上意下達で家庭に広めたりする装置として利用されかねないことだ。

 日P会長は中央教育審議会の委員でもある。前会長はシンポなどで、保護者間で意見が割れる道徳教育について個人的な推進の立場で発言していた。一方、日Pは例えば原発事故後に給食の安全に関する要望を出していない。各地の親の切実な声を国に届けているとは言いがたい。

 安倍政権は学校を中心とした地域活性化の絵を描き、PTAも活用しようとしている。国が望む家族観や道徳観を広める道具にならないか。親たちの思いとは隔たりのあるPTAのリーダーたちも取材してきた私は、大いに危惧している。

 (ほりうちきょうこ 経済部)

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