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 東京電力福島第一原発事故(とうきょうでんりょくふくしまだいいちげんぱつじこ)から4年半。福島県楢葉(ならは)町に出されていた避難指示(ひなんしじ)が9月5日に解除(かいじょ)され、住民が自宅で暮らせるようになりました。しかし、町に戻った住民はごくわずかです。ほかの9市町村は今も避難指示が出たままで、7万人余りが避難生活を続けています。

 ■生活に不安、多くはまだ町外

 楢葉町は福島第一原発の南側にあり、町の面積(めんせき)の8割が原発から20キロ圏(けん)に含まれる。政府(せいふ)は東日本大震災発生翌日(ひがしにほんだいしんさいはっせいよくじつ)の2011年3月12日に避難指示を出し、ほぼ全住民が避難した。

 当初、町は原則(げんそく)立ち入りが禁止されていたが、12年8月から日中は立ち入りできるようになった。国は原発事故で放射性物質(ほうしゃせいぶっしつ)がまき散らされた地域の中では比較的(ひかくてき)放射線量(ほうしゃせんりょう)が低いと判断(はんだん)したからだ。

 国は土地や建物などの放射性物質を取り除(のぞ)く除染(じょせん)作業を続けてきた。今年4月、国に届(とど)けを出して自宅に戻る準備(じゅんび)を進めるための宿泊制度(しゅくはくせいど)を始めた。9月5日には避難指示を解除し、住民は届けなくても自宅で暮らせるようになった。

 ただ、この日を境(さかい)に多くの住民が一斉(いっせい)に町に戻ったわけではない。まだ多くの人が町外の仮設住宅(かせつじゅうたく)などに住み続けている。町が滞在(たいざい)を確認しているのは、約2700ある全世帯(せたい)のうち120世帯ほどにとどまる。

 多くの人が町に戻らないのは、本当に生活できる環境(かんきょう)なのか心配しているからだ。

 例えば、買い物や病院通いの不便さがある。町には仮設商店街のスーパーとコンビニしかない。医療機関(いりょうきかん)もなく、体の調子が悪ければ近くの市町村に出かけなければいけない。町内唯一の診療所(しんりょうじょ)が今月再開し、県立診療所が来年2月にできるが、お年寄りを中心に不安が大きい。

 飲み水を心配する人も少なくない。町内のダムの湖底(こてい)の泥から、高濃度(こうのうど)の放射性物質が検出(けんしゅつ)されたからだ。国は水質(すいしつ)に問題はないとしているが、「気持ちが悪くて飲めない」と、ペットボトルの水を買う人もいる。

 また、避難生活が長引いたことで、避難先で仕事を見つけたり、転校した学校に慣(な)れたりして、町に戻らずに定住(ていじゅう)することを決めた人も多い。

 事故で、町は様変わりした。福島第一原発の廃炉(はいろ)作業の前線基地(ぜんせんきち)として、全国から多くの作業員(さぎょういん)がやってくる。町ではそうした人たちを支えることで仕事を増やし、住民に戻ってもらおうとしている。災害公営(さいがいこうえい)住宅や分譲(ぶんじょう)住宅などの整備(せいび)も進めている。ただ、どれだけの人が町に戻ってくるのかは未知数(みちすう)だ。

 ■国は他市町村も検討

 これまでに避難指示が解除されたのは、田村市都路(みやこじ)地区、川内村(かわうちむら)東部、楢葉町と3カ所で、全自治体規模(きぼ)での解除は楢葉町が初めて。依然(いぜん)として9市町村で避難指示が出ており、7万人余りが避難生活を続けている。

 このうち、そこまで放射線量が高くない区域(くいき)について、国は17年3月までに戻れるようにする方針を打ち出している。対象地域の人口は、約4万7千人となる。

 また、国は楢葉町に続き、来春の避難指示解除をめざす3市町村で、自宅に帰る準備をするための宿泊制度を8月末に始めた。対象は南相馬市小高区(みなみそうましおだかく)などと川俣町山木屋(かわまたまちやまきや)地区、葛尾村(かつらおむら)の計約1万4千人が対象だ。宿泊期間が終わる11月末にも、避難指示を解除するかどうか決めることにしている。

 国が避難指示を解除しようとしているのは、避難が長引いて体調(たいちょう)を崩す人が増えており、自宅に戻ってもらおうと考えているからだ。また、避難指示が出ている地域には建設業者(けんせつぎょうしゃ)が入りたがらない。避難指示を解除することで、業者が壊(こわ)れた住宅を直したりできるようにする。

 一方、放射線量が高い区域では、避難指示の解除のめどが立っていない。また、避難指示区域以外でも、約3万5千人が避難している。津波(つなみ)や地震(じしん)の被災者(ひさいしゃ)などを除き、約2万5千人は放射性物質の影響(えいきょう)を心配して避難しているとみられる。(長橋亮文)

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